朝鮮半島問題をどう考える?
 今週のゲストは、平和資料館草の家事務局長の金英丸(キム・ヨン・ファン)さんです。金さんは韓国のご出身で、東アジアの平和運動に関わられています。
 今日のテーマは「朝鮮半島問題をどう考える?」です。朝鮮半島の北の国である朝鮮民主主義人民共和国については、情報が従来は少なく、国交もありませんので、正確な朝鮮半島情勢を把握するのは難しいと思います。
 日本人拉致問題や、核開発問題などが、肥大化した情報として語られていますが。
軍事的な脅威についてはどうなのでしょうか?ミサイル発射実験などが報道されているのですが。韓国は朝鮮民主主義人民共和国の軍事力をどのように見ているのでしょうか?

金英丸さんは、東アジアの地図を逆さまにして見ると情勢がわかると言われています。

確かに朝鮮民主主義共和国側から見れば、日本列島が覆いかぶさり、韓国や沖縄の米軍、日本駐留の米軍、韓国と日本の軍事力は「脅威」に感じると思いますね。

何か包囲されているように感じるはずです。

 ソウルは韓国の人口の25%以上住んでいる大都市で人口1000万です。あそこから朝鮮民主主義人民共和国との国境まで車でどれくらいかかると思いますか?僅か50キロです。1時間もかかりません。
 ソウルは首都ですからね。それからインチョン国際空港は海にありましから、北の海と1時間もかかりません。ソウルから1時間に行きますと国境に「統一展望台」があります。そこから見ますと北の畑で仕事をしている
人が見えます。韓国人は全然脅威と思ってはいません。

 逆にすべての物事を北の立場で考えてみてください。韓国にも3万7000人の米軍がいます。韓国の軍事力もあります。沖縄にも米軍がいます。日本の自衛隊もいます。世界第一の米国と第2位の日本が軍事同盟を結んでいますし。
 1999年で日本の自衛隊の予算は、現在朝鮮民主主義人民共和国の予算の20倍で組んでいます。皆さんの税金で。そう考えますと北側からすれば、アメリカのブッシュ政権が「先制攻撃をする」「核兵器も使用する」と言っています。
 北にすれば「怖い」と思いますね。それに対して韓国の人達は、北と民間レベルで交流をしています。交流をすすめています。毎年20万人が言ったりきたりしています。そのことを日本の皆さんはよく知っていただきたいです。

 今日本で子供達は北のイメージで持っていますのは「怪しい」「怖い」ですね。それは自分達が子供のときに受けてきました反共教育と全く同じです。「北の人は狼の顔をしているとか」。
 韓国も軍事独裁政権時代にそうした教育がされてきました。それにたいして北の人々の立場にたって、素直な顔を見ると言うことが、大事だと思います。

収録の様子です。韓国の事情や朝鮮半島情勢を詳しく、淡々と解説いただきました。
アメリカ軍の韓国内からの撤退も噂に出ています。韓国人の反米感情は根強いのでしょうか?

 反米感情と言うより、米軍が1945年以降や、1950年の朝鮮戦争の後も駐留していまして、今も3万7000人韓国にいます。今まで何をしてきたのか。
 韓国内での米軍の犯罪は、日本でも沖縄の例があるからわかると思います。自分達の犯罪を米軍は地位協定によって、自分達で裁判をやります。この間2〜3年前に米軍の戦車によって2人の女子中学生が事故で轢き殺されました。その裁判の結果どうなったかといいますと事件を引き起こした米軍兵士は無罪になり、全員帰国しました。それに対して韓国の人たちはやっと米軍はなぜ韓国にいるのかを考え出しました。

 北と南が仲良くなれば「米軍はいらない」という認識ですよね。近いうちに米軍は3分の1に減る予定です。アメリカがいったい外国で何をしているのか。イラクのたとえでも皆さんお分かりであると思います。

 それに対して韓国の人達の認識が変わりました。昔は私達を守るために来てくれたのだという認識でした。そのあたりも日本の皆さんも一緒に考えていただきたいですね。

 朝鮮戦争について伺います。現在は「休戦」状態で、終戦したわけではないように聞いています。両国は休戦ラインを挟んで謀略放送をしていましたが、最近看板なども撤去したようなのですが。
 1953年7月27日に休戦から昨年50年経ちました。韓国でも休戦体制を平和協定に変えるべきだという動きもあります。今の北側との関係が良くなり、それにともないアメリカとの関係も改善しようという。
 それで言っていることは、北とアメリカとの間で不可侵条約を締結しようと。韓国も北側もお互い戦争しようと言う意志も、能力もお互いないことはわかっているので、当たり前のことだと思います。
 昨年の50周年を機会に、お互いを誹謗する看板や、放送もなくなりました。西の海では、お互いの無線の周波数を共通に使用することになりました。ここ6年ぐらいで、南北交流は革命的に進んでいます。

平和資料館草の家のホールの様子。訪問した当日は「アジアのファッションショー」の準備をされているようでした。

民族衣装を身に着けた女性がモデル歩きをしていました。

 金大中大統領が、2000年にピョンヤンを訪問されて、交流が進むのかと思われましたが。政府間ではあまり進んでいないようですが。民間が先行しているのでしょうか。
 去年1年だけで、108日、北と南の政府関係者同士の会議がありました。経済交流関係もあります。ケソンというところでは、南の企業が経済団地をこしらえました。北と南が鉄道も道路も繋がっています。シャトルバスもあります。
 それと韓国の人々はお金さえ払えば誰でも、クンガンサンというところへ観光に行けます。去年の8月15日では韓国の放送局が、ピョンヤンから歌自慢コンテストを放送しました。

 日本ではあまり北と南が仲が良いと言うことが報道されていません。経済協力や人道支援もどんどんされています。文化的、政府レベルでの交流が進んでいることを皆さんに知っていただきたいですね。

 朝鮮半島情勢が緊迫しますと海上自衛隊のイージス艦が日本海へ向かいます。

 イージス艦は探索能力に優れ、巡航ミサイルも装備しています。

 緊張は武力でなく、相互理解でほぐしていかねばと金英丸さんは語ります。

 朝鮮半島を平和にするのもそのなかの動きでしょう。平和運動の進展があるのでしょうか?
 ありますよ。朝鮮半島をめぐって以前は、38度線を境に、北と中国とロシア、韓国とアメリカと日本が対立していました。
 今日本が国連加盟国と国交がありますが、唯一ないのが、朝鮮民主主義人民共和国です。91年から朝鮮民主主義人民共和国も国連に加盟しています。
 拉致問題も、核問題も「非正常な」関係でありました。それを正常に戻す必要があります。一番近い国であるのに60年以上も国交がないのはおかしいです。その前に何があったのかを見つめて、見直すこと。それで正常な関係にもどす事が、東アジア全体の安全にも欠かせないことです。
 北と南が仲良くなった。日本も朝鮮半島の北と南も仲良くなることは平和になることです。
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