{content}       「天使の翼プロジェクト」の総括と今後の展開について

 「天使の翼」とyahooで検索いたしますと、関連サイトが8840あります。それだけ会の名称には、普遍性が要求される性格のものでした。
 高知での「天使の翼」は、1992年に高知青年会議所の事業として始まりました。重度の障害者を東京ディズニーランドへ連れて行くという日本初の大事業でした。移動、宿泊、食事、排泄など数々の困難が予想されました。医師や看護士、大勢のボランティアのチームワークとホテルやディズニー側の協力もあり、事業は大成功しました。1993年日本青年会議所の褒章でグランプリを受賞いたしました。
 翌年から活動主体は「天使の翼会」に移行し、継続してディズニーランドへの旅行が、毎年実施されました。ホテル側、旅行会社、バス会社なども「バリヤフリー」の対策を次々と打ち出しました。富山県なども同様のツアーが実施され、障害者ツアーが成立するような契機をつくりだしました。
 開催資金を集め、提供するボランティアと、ツアーに同行し身体介護などの作業をするボランティアを明確に分けました。「誰もが無理なく実施できるボランティア活動」を「天使の翼会」は確立しました。結果として、施設、航空会社、バス会社、旅行会社、ホテルなどが徐々にバリヤフリー化いたしました。障害者ツアーも誕生させたのですから、経済波及効果があったのです。


       当初はフードサービスでの就労の創出を検討しました

 沖縄在住の義弟が、友人である精神病院院長と提携し、ベーカリーショップと喫茶店を経営しています。病院側は患者の社会復帰の事業所として位置づけています。失業率の高い沖縄では就労は困難です。ならば職場をこしらえようという前向きな院長の発想でした。焼きたてパンの技量が高くない沖縄であれば参入の機会はあると義弟は判断しました。
 大手製パン業者の進出にもかかわらず、高知のリテールショップは大健闘しています。ベルゲン、こみベーカリー、ロマンド、永野旭堂などを、青年会議所の先輩でもある製パン資材販売会社社長の協力も得て、義弟は見学し、経営者と懇談することが出来ました。
 現在沖縄では、2店舗展開し、営業は順調です。しかし、もくろみどうりであったかと言いますと必ずしもそうではありませんでした。
 小規模事業所ゆえに、人間関係の維持が難しいことがあげられます。仕事も病院側のスタッフが殆ど行うのが実態だったようです。義弟よりの反省点として以下の事があげられました。

1)行政などのバックアップ体制を充実させること。小規模事業所では限界がある。

2)味で勝負すべきだから、品質管理が大事。雇用の維持と、品質の維持を同時に達成
  することは難しい。

 「天使の翼プロジェクト」の出発点はまさにそこでした。会合のメンバーは、国、県、市の行政職員、大学講師、コンサルタント、食品製造会社、食品販売会社、包装資材会社、報道会社、建築設計士、NPO法人理事長など多彩でした。
 現在の厳しい経済下で、障害者や高齢者の雇用を創造することは出来ないのだろうか?
従来型の事業形態ではなく、新たな形は可能なのだろうかと議論は展開されました。
 ともすれば「福祉は福祉」「商業は商業」で人的交流も、発想も分断されがちです。懇談会の参加各位も「自分の得意分野」を持ち寄り、議論することに心がけいたしました。
 フードサービスが雇用創造効果があるのではないか。製造段階、流通段階、販売段階で雇用を生み出す可能性がある。しかも荒利もあるので、雇用も生まれやすいとの議論がありました。従来型の地域内消費型の店舗では、既存業者との競合がある。むしろ製品開発と販路の開拓を重視する。県外市場に出せる製品を開発すれば、雇用の創造になるどろうという方向が提示されました。

       フードサービス自体の難しさ

 日本経済は大不況です。フードサービス業界も同様。マクドナルドの低価格戦略も影響で、売り単価が下がり厳しい局面になりました。またBSE問題や、産地偽装事件の多発で、産地表示と食品の品質管理がより厳しくなりました。
 フードサービスのなかで、障害者や高齢者をあらたに雇用するのは困難になりました。当初想定したベーカリーショップも、沖縄の義弟が始めた頃から「品質は上昇」「価格は横ばいもしくは低下」という厳しい局面になりました。経済と、社会情勢の変化が、「雇用創造」を困難にしたのです。

       リサイクル事業と雇用創造

 議論が行き詰まりそうになった折、新たな構想を提示いただいたのが、山中運送リサイクルセンターでした。事業所から缶類とペットボトルを収集し、分別作業をしています。
 リサイクルセンターも合理的な運営をしています。分別作業を機械化し、効率化しています。でもキャップをはずすとか、ビニール類を取り除くとか、人手作業もあります。
 危険ではありません。作業後の清掃作業も工程のなかに組み込まれています。
「環境教育」を学ぶ施設としても活用出来そうです。この事業を支援し、発展していくことが出来れば雇用創造は可能であると当懇談会は判断いたしました。
 リサイクルセンターの悩みは、事業所との契約を増加させることと、回収容器の大量確保であります。それさえ解決できれば、雇用創造は可能です。
 「天使の翼プロジェクト」は第6回懇談会(2002年12月5日)を持って終了いたしました。ご多忙の中参加いただかれました皆様に厚く御礼申し上げます。
 参加者各位の皆様、当懇談会に関心を持たれている皆様のご支援に感謝いたします。プロジェクトはこれをもちまして解散いたします。ご支援ありがとうございました。


                                  * 2002年12月25日(火曜)
                 


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2002年3月1日