子育て支援のありかたについて
 今週のゲストは、高知大学人文学部社会経済学科教授の田中きよむさんです。今日のテーマは「子育て支援のありかたについて」です。
 先月は大阪岸和田市で中学3年生への親からの残虐な虐待行為が、国民に衝撃を与えました。この事件でも「親権」が壁になり、学校や児童相談所など地域社会が子供をなかなか救済できませんでした。
子供の「人権」はどうなっているのでしょうか?子供の人権と親の親権はどちらが優  先するのでしょうか?
 子供の人権と親の「親権」は対立するののではありません。子供の人権を守るために親の「親権」が認められています。そう考えるべきであると思います。虐待に関しましては、児童相談所の対応もかなり問題があると思います。地域的にも県下にひとつとか2つとかいうレベルでは児童相談所の対応にも限界があると思います。もっと地域レベルで早い段階で、対応できるような児童相談所の地域的な機能や拠点を設けていくべきではないかと思います。
子育て支援の観点からお伺いします。最近は働く女性の比率が高くなりました。出産、育児を伴いますと、女性のキャリア形成にマイナスに働く場合が多いと聞いています。この問題解決に方法はありますか?法律でしょうか?職場の協力、家族の協力のなにが大事なのでしょうか?
高知女子大社会福祉部の学生達と田中さん
 
両立がしにくくて、女性が仕事をあきらめて育児に専念されたとします。年間年収500万円の年収を30歳から50歳まで、20年間放棄しましたら、1億円の所得を遺失(失う)することになります。ここらが大きなポイントになります。例えば法律レベルでは育児休業ということで、休業中の賃金給付はようやく40%になりました。それを上昇させることも考えられます。職場では育児休業が取りにくい雰囲気があります。育児休業を取りやすい環境を作ることが大事です。
それから家庭に帰った場合でも、伝統的な意識で妻がすべて家事をするのではなく、夫も協力しないと、仕事と家庭の両立ができないと思います。
子供を保育所に預けましても、遅い時間までみてくれません。多くは「無認可保育所」に、保育所から引き取った子供を再度預けなけばなりません。なんとかならない
ものなのでしょうか
二重保育と言われているものですね。女性の就労形態が多様化しているからですね。夜遅くまで働く人も多いわけです。ひとつには認可保育所が遅くまで延長保育をする、夜間保育をするように力をいれることも必要です。それから無認可保育所が人的基準や設備面の基準を満たして、認可保育所に転換していくことですね。そういうことをしながら、多様なニーズに対応していくことが必要ではないでしょうか。

「出産」「子育て」などは、「女性のキャリア」として社会的に評価される仕組みは考えられないのでしょうか?

また「介護」も社会的に評価される仕組みづくりが急務であると思いますが。学会や政府の関係者で議論はされたことはあるのでしょうか?

議論はされています。子供を生むことは年金などの社会保障の担い手を増やすことになるからです。貢献している側面がありますね。例えば年金の負担や、給付を子供のいる家庭にはメリットをつけるとか。ただ社会に対して次の担い手を育てていることで評価することはひとつの方向です。この発想が強く行き過ぎますと、子供が生みたくても生めない人に対して差別的な問題になるのではないかという心配があります。


 介護も家族でやる場合に、家族でされる場合は評価するという考え方もあります。実際にドイツの介護保険などでは、現金給付がひとつの選択肢になっています。ですから家族で介護される場合は現金を給付する、外部サービスを受ける場合は現金は給付されません。
 これについても現金給付してしまいますと、家族が介護にがんじがらめになってしまう状況に後戻りするのではないかという懸念が言われています。選択肢を広げる意味で家族で介護する方法も良いのでしょうが、他方で外部サービスを充実させて、サービスの面で社会的に支援するのも大変重要ではないかと思います。

沖縄の「ゆいまーる」というお話も聞きました。地域が子育てをする。 昔のように「地域が子育てを支援する」ことが必要でしょう。その新しい仕組みはどうあるべきかと思われますか?高齢者を支援する仕組みの再構築が必要だということですね。同時に最近のIT機器などを積極的に活用は出来ないのだろうかと思いますが。
IT機器がどのような活用されていることについてはよくわかりません。子育てが地域に支援さしていこうということにつきましては、当事者の方が、声を上げて「子育てサークル」とか、「子育て支援ネットワーク」地域のなかで、子育てを皆で支援していく動きが高知県内でもいろんな市町村で出来上がりつつあります。