少子高齢化は悪いことなのか?
今週のゲストは、高知大学人文学部社会経済学科教授の田中きよむさんです。今日のテーマは「少子高齢化は悪いことなのか?」です。日本は急速に高齢化が進展しています。
その理由は出生率の低下、子供の減少とも関連があるようです。
日本で一番の高齢者が長生きする県は沖縄県です。しかし高齢化比率は高くはありません。出生率が高いからです。沖縄はなぜ子供の数が多いのでしょうか?県民所得も高知同様低いようなのですが・・・・
平均寿命とか、100歳以上の長寿者が県民に占める割合は沖縄県は高いです。長寿県です。他方で1人の女性が平均的に生む子供の数は、全国のトップクラスですね。その結果県人口に高齢者が占める割合は高くはなりません。40位以下です。
子供の数が比較的多いという要因はいといろと見方があります。ひとつには「地域で育てる」という発想や意識が沖縄では比較的強いようです。私も沖縄へは何回も行きました。
「ゆいまーる」という精神、「結びつきがまわる」と書いて「ゆいまーる」。だから子育てにしろ、農作業にしろ、特にボランティアなんて言わなくてもお互いが気づいたら地域のなかで助け合う関係があるということです。それが子育てに出ているのでしょう。それと沖縄は男の子を比較的欲しがられる意識が比較的強いです。そうした地域の事情から子供が他の県に比べると多いという結果になっていますね。
沖縄のお墓。長男の一族が墓守をします。
沖縄の死亡広告。家族・親戚まで掲載します。
そうですね。沖縄は「長子相続」ですし、「門中」とか言いまして、やはり男子(長男)が家督を相続します。お墓などもそうですね。そんな習慣がありますので、3人ぐらいの子供の家族は身近な例でも多いですね。
それから一般論ですが、女性が子供を産まなくなった理由はどんなところにありますか?対策はありますか?社会的な要因でしょうか?それとも日本民族の活力が衰えたからなのでしょうか?
これは先進国は総じて少子化になります。「多産多死」状態から、「少産少死」に経済が発展するとともに移行しています。それは日本の場合もあてはまります。子供に「経済的な期待」をしないようになります。農業が中心の社会では子供を「労働力」として期待したりするところがありました。今なぜ子供を生むのか?と聞きますと「可愛いから」と答える人が若い人の場合とくに多くなってきています。
経済的に養ってもらうよりも、純粋に可愛いからということです。子供が「精神的な満足な対象」に移ってきています。
もう一点は「子育てのコスト」です。特に学歴が女性の場合も高くなりますとそれなりの経済力を持ちます。仕事をすることと、子育てが両立しにくい場合は、それなりの経済力を持っているにもかかわらず(仕事のほうを)諦めなければなりません。それが大きな問題であると思います。
子供が精神的な価値の対象になっていること。それと関連しまして「少なく生んで、大事に育てる」という意識が強くなっています。大事に育てる分子育てにコストがかかります。そのことと仕事の両立がしにくいことも大きいです。「収入は下がるし、子育てのコストは高くなる」ということで、両立しにくい場合は、(子供を生むことが)一大決心になりますし。そのあたりが「少子化」の背景ではないでしょうか。
イタリアなどでは、日本同様出生率が低い国です。少ない数の子供同士が結婚しますと「家が余り」ます。それを貸して収入を得ています。自分達は2万円のアパートに住みながら、もう1軒は外国人に8万円で貸しているとの話も聞きました。年収は低いそうですが、優雅な暮しのようですが・・高知でも出来そうな気がしますが・・・。
そうですね。個人の住宅も公共施設にしましても少子化で「遊休化」するところがかなり出てくると思います。それをいろんな人たちが「共同利用」したり、有効利用することが今後はひじょうに重要になるのではないかと思います。
学校なんかでも空き教室が出てきます。そこへ高齢者も来ていただいて、高齢者と子供が交流するような拠点にしていくことで、公共施設を有効利用することを考えていくべきですね。
屈託のない子供たちは少数派
知人の結婚式の受付をされる田中きよむさん
若い人たち、特に学生達に「少子高齢化」の意義を田中さんはどのように教えられているのでしょうか?
ひとつには一般論としては、「少子化が進展すると将来の労働力不足になり、経済成長にとってはマイナス」です。社会保障の負担は、現役世代(負担すべき人)が減少しますと
大きくなります。他方ではそうした見方だけで良いのかという投げかけもしています。
何がなんでも経済成長というこれまでの考え方を少し、「チェンジする」時代になってきていると思います。
その場合のキーワードは「共有化」とか「共同利用して有効利用」という考え方で、経済のしくみや、社会のしくみを変更しようということですね。
そうですね。1人1人がゆとりを持って生活することです。物やサービスをたくさん生み出すという発想ではこれからは難しくなるのではないでしょうか。そいれよりも物質的にはあまり豊ではなくても、1人1人が生きることに豊かさを感じる時代が今後は求められるのではないでしょうか?
高齢者を敬う、大事にする社会は「良い社会」ということになると思いますが・・・
そうです。高齢者であれ、子供も少なくなる中で、1人1人が大事育てられる社会。それがひとつの「キーワード」になるのだと思います。