ランドスケープデザインの良い都市の条件とは?
 今週のゲストは建築設計士の福島高明さんです。今日のテーマは「ランドスケープデザインの良い都市の条件とは?」でお話を伺います。
 自然条件や、背景、建物、樹木などに配慮し、景観設計することをランドスケープデザインと言うそうです。福島さんは1級造園施工管理技士の資格ももたれています。 ランドスケープデザインの優れた都市の条件とはどんなところでしょうか?日本ではあまり聞かない話なのですが。
やはりその地域の為政者であるもの、例えば国土交通省とか高知県が、景観に対してどういう考えを持っているかというものが基本になりますね。
 現在景観3法が今年施行されます。やはり市民やNPOなどの声を聞いて景観形成をやっていくことが法令化されています。国の地域の姿勢がまず大事ではないでしょうか。
 公園と言いますと、有名なのはニューヨークのセントラルパークだと思います。今までの公園のつくりかたとは全く異なっていたと聞いたことがありますけれども・・・・・。
 ヨーロッパの庭園は大変美しいものですたが、貴族のものであり、市民のものではありませんでした。アメリカの場合は市民の公園です。世界で最初の都市公園がセントラルパークです。
 フレデリック・ロウ・オルムステッドという造園設計士がセントラルパークを手がけ、全米各地にいくつかの公園を手がけています。
 その思想は「公園は市民のもの」「コミュニティ(共同体)のものである。」「市民のレクレーションの場としての公園」ということで公園の設計を手がけています。
 公園設計の底辺にあるものが、ヨーロッパとアメリカでは全く異なります。近代的な公園はそうした思想のものとつくるべきであると思います。
 福島さんは確かアメリカにも2年程度いらしたと思います。
  カルフォル二ア州のバークレーへ行く道などは、道々でゴールデンゲートが見えるように設計されているように聞きました。またニューヨークのセントラルパークもランドスケープデザインが確立した最初の公園であるとさきほどのお話で理解できました。「肌」で感じた、生活されて感じたアメリカの環境はいかがでしたでしょう。触発された部分はありましたか?
ニューヨークもスカイラインを計算して建築計画が立てられています。今はなき世界貿易センタービルがニューヨークのランドマークでした。 ワシントンDCの独立記念碑を背景に。ワシントンDCもアメリカのランドスケープデザインを見ることが出来ます。
 そうですね。日本の都市整備は法律でくくられています。「必ず6メートル幅の道路をこしらえなければならない」となっています。規制が実に多いですね。
 アメリカの場合は、行政側がフレキシビリティですね。許容された範囲の中でもっと自由にものをつくるべきだという考え方ですね。自然をもっと生かした公園とか。住宅地などでも森の中で,自然のなかで道路などくねくねしていまして、本当に自然のなかで、建物が点在しています。
 まさしく自然と癒合した生活をしているのを見てまいりました。
 日本では都市計画道路と言えば、まっすぐの道をバーンとこしらえますね。アメリカはそのあたりの考え方が違うのですね。

 そうですね。日本は自然を壊しているのが現実なのでしょう。

ニューヨーク市ロックフェラーセンター前

(福島高明さん撮影です)

街の中心街ですが、樹木がふんだんに植えられています。癒しの効果もあると思います。

 概念の違いがありますね。日本の場合の都市計画は街路整備のことですね。都市計画課という部署もありますが、主に道路整備ばかりですね。
 以前私も県の都市計画課の委員会「都市計画マスタープラン策定委員会」の委員をしていたことがありました。国の意向に沿い、僅か半年で高知市および広域の都市計画のマスタープランをこしらえるという目茶目茶なものでした。
 委員も建設業者と、コンサルタント会社と,行政側委員も建築、土木の担当者ばかりでした。短時間でしかも人選の偏ったものたちで、しかも短時間でマスタープランなど出来るはずがありません。
 マスタープランだというのなら、福祉や、教育や、レクレーションやら、子供や高齢者を集めてワークショップをするのが普通でしょう。おかしいですね。
 今地方財政が厳しい時期ですね。われわれも忙しさにかまけて自分たちに地域のことを考えなければいけませんね。地域の商店街を残すためには地域の商店で買い物しなければいけまんね。
 でもそれは使い分けですね。あるときはイオン高知。あるときはサンシャイン。あるときは地域の商店街で買い物すべきでしょう
 アメリカのセントラルパークをこしらえた考え方は「公園はコミュニティそのもので、市民の触れ合いの場である。」でした。
 福島さんは「市民が行政とともに取り組むコミュニティ形成や、ランドスケープに関するコーディネイトとデザインワークを行う」ことを言われています。高知で可能なのでしょうか?
 先ほども言いましたが、地方財政は逼迫しています。市民も積極的に地方の公共の場をどうこしらえるのか。という場に積極的に参加しなければならない時代でしょう。だからわれわれのような専門域のものばかりでなく、例えば色彩の専門の人とか、障害者の方とか、いろんな人達が集まりひとつのものづくりをしていただくのが大事ではないでしょうか。
  その考え方で福島さんが現在計画されているランドスケープデザインによる街づくりはありますか?おかまいない範囲でご紹介ください。
福島高明さんが設計された春野町の兼山公園です。
 最近ですが高知県春野町の役場前に新川川の土手沿いに兼山(けんざん)公園の設計に携わりました。さきほどのセントラルパーク同様に、住民各位のコミュニティの位置づけの公園です。
 そのなかで私が昔聞いた漫画家の故青柳祐介さんが「高知の青い空は都会の青い空とは違う。親子で空を見ながら雲が・・・・」というお話をされました。
 親子が土手に座って、青い空を眺めるようなシュチュエーションをこしらえればという考え方で設計しました。造形的にも考えました。
 アメリカのグランドキャニオン、京都の清水寺などああいう自然にのめりこむような印象がありますね。そういう要素を見晴台をこしらえました。
 市民参加や行政と市民とのよき環境が確立されていくことが、ランドスケープデザインのひとつの条件になるということですね。

 それは当然ですね。市民と行政とともにやっていくべきだと思います。
住民など関係者が集まりワークショップをしています。工事着工前のプロセスが一番大事です。
 福島さんの名詞のなかに「COMMUNITY DEVELOPMENT BY DESIGN」という言葉が表記されています。これはどういう意味なのでしょうか?
 これを日本語に訳しますと「デザインによってコミュニティをこしらえる」ことになります。さきほどもお話しましたように、フレデリック・ロウ・オルムステッドがコミュニティを意識しながらセントラルパークを設計したように・・。
 私はランドスケープ(景観設計)に限らず、建築のほうも同じように考えています。

* ランドスケープ(風景や景観の設計)の歴史 

 ニューヨークのセントラルパークを設計した、フレデリック・ロウ・オルムステッドが1800年 代の後半に「ランドスケープアーキテクチュア」という言葉を発表したのが始まりと言われていま す。