まちづくりのありかたについて
 今週のゲストは、国土交通省四国地方整備局高知河川国道事務所所長の岡本誠一郎さんです。今日のテーマは「まちづくりのありかたについて」でお話を伺います。
 明治以来近代国家を目指す日本は「道路と橋は幹で、水道や家屋は枝葉」という考え方に支配されてきたのではないのでしょうか。
 都市計画事業も未だに、街路整備が主体であり、自動車道路が主役です。
「なんのために都市計画事業をするのか?」という観点や発想が弱いように思うのですが。その原因は何であると思いますか?

 確かに明治時代は,富国強兵と言われ、鉄道ですとか、道路とか、港湾とかを中心に整備してきた歴史はあると思います。最近になりまして、身近な生活環境に目を向けるようになりました。いろんな公共事業もそれに対応した仕事になっています。
 必ずしも「枝葉と幹」ということとはなくなってきているのではないでしょうか。
 道路計画や街路整備において、かつて土佐道路は周辺地域を一変させた社会的効果がありました。現在高知市周辺では、3箇所で区画整理事業が展開されています。潮江地区高知駅周辺 弥衛門地区です。JRの鉄道高架(連続立体交差)事業も進行います。あいかわらず自動車道路中心で、まちづくりのイメージがありませんが・・・。
 土佐道路を例にしてお話します。土佐道路自体は、国道56号で、広域の幹線道路です。潮江地区に土佐道路の整備が入ってきに、あわせて区画整理、密集市街地の対策事業と一体にやってきました。いろんな意味でこの地域の町並みが変わってきています。
 私も今その地域に住んでいます。今どんどん変わりつつあるなと思います。これはそのときに、単に、道路をつくる。自動車を通すということに決してとどまってはいないと私は思っています。
高知市潮江地区では、区画整理事業が展開されています。
 その中で、区画整理があり、いろんな事業があり、またその中で、そこに住んでいる人達が、これから、3年。5年と言う期間で、どういうまちづくり、あるいは昔のコミュニティをどのように復元していくのか。

 取り組みが出てくると思います。いろんな取り組みを一体となってやっていくことによって、本当の意味でのまちづくり、地域づくりが、進んで来るのではないか。道路と言うもには、単に、ひとつのパイロット事業的なものであったんではないか。地域の生活、関わりをこれから考えていく必要はあるのではないでしょうか。

 高知市潮江地区の様子。人口密集地区です。道路幅も狭く、行き止まりもあります。

 反面「ヒューマンスケール」でもあるため、地域のコミュニティが学校区ごとに存在したり、体育会活動や、町内会活動も盛んな地域でもありました。

 区画整理該当地区や、土佐道路整備地区とは好対照です。

 前半の部分で土佐道路の話が出ました。その土佐道路は今までも、地域を大きく変えるインパクトがありました。それが潮江地区に土佐道路が入ってきまして、六泉寺トンネルの県道と結びついて、大幅な区画整理事業をしています。かなり潮江地区のコミュニティや町内会などは変わると思います。
 それに対する「期待度」などはどうなのでしょうか?
 いろんな意味で、地域のコミュニティや活動は変わってきています。道路が出来ることによって、良い面もありますし、地域が分断されてしまうという悪い面も恐らくあるでしょう。これをきっかけに、区画整理され、新たな町並も変わってくる。今度はこれを新たなコミュニティをどう作っていけるのか。それに対して、どう応援していくか。
 私たちは応援は出来ますが、コミュニティを作ることは出来ません。そのときに地域のコミュニティとがどう変わっていくのか。そこを私たちは注目しています。
 そういった取り組みや地域のコミュニティを盛り上げていくようなそういう活動をしていく人達を注目しています。9月に出演された福島高明さんもその1人であると思います。町並みや街の景観。コミュニティ。潮江のそういった地域のコミュニティを盛り上げていこう。NPOを立ち上げていこうというように考えておられるようですね。

 私たちの仕事と、活動に接点があります。そういう点を大事にしながら、協働(パートナー・シップ)というものは何なのか。考えながらこれから土佐道路の事業と、今後の土佐道路の管理を入ってくるのかなと思っています。

あるワークショップの様子。地域の住民も交え、意見交換しています。
 そうですね。市民と公共工事をされている行政側とが上手く、一緒にまちづくりが出来るのか。良い事例になればいいのですが。あと街路整備についてなのですが。自動車がどんどんどんどんコミュニティに入ってくることは、よそ者が入ってきて通過道路になりますね。
 分断されてしまうのではないでしょうか。良い意味でのコミュニティが破壊されてしまうのではないでしょうか。街路整備等言うのであれば、歩行者とか、自転車とか、町並みの景観などが配慮されるべきではないのでしょうか。
 住民との係わり合いがひじょうに必要になってくるのではないかと思うのですが。道路整備だけでは限界がありますね。

 まちづくりのワークショップや住民説明会と言いましても、一番問題なのは開発をされる当事者と、住民側との情報の格差です。文章や図面やイラストや完成予想図を見せられても地域がどう変わるのかよくわかりません。想像できませんね。なにか良い方法はないのでしょうか?以前は模型とかマイクロスコープなんかで説明されたことはありましたが・・・。

 最近注目されていますのは、3Dと言いまして、立体の映像を使用した説明がひじょうにわかりやすいですね。ゲームなどで、バーチャル・リアリティと言われていますね。まちづくりにも議論をされる場合のツール(道具)として使うことが注目されています。
 例えば、道路の周辺を整備していくときに、地形のデーターから、立体的な画像や映像を作り上げます。これは自動車で走る視点でも再現できます。歩いている人の目線でも見えることも出来ます。
 更には隣の建物からどういうふうに見えるのかと言うことも、瞬時に一旦そのデータを入れてしまいますとすぐにデモンストレーションが出来ます。これを皆さんに見てもらいまして、「これはこうしてほしい」とか、「この方がいいのではないか」とか議論をあれやこれやしてもらいます。
 そしたらこういうふうに変えていくのではないか。そういう議論をすることで、わかりやすい合意形成のための、優れたツール(道具)になるのではないかと注目しています。
 バーチャルリアリティ(仮想現実)にまちづくりがなりますと、参加者の関心は各段に高くなりますね。
地域での話し合いの場で、ゲーム感覚で「バーチャルまちづくり」でやれば盛り上がります。
 
 そうですね、実際に目で見て、自分はこう思うと言うことを、その場でデータを入れることで変える事が出来ます。変えて自分の目で見ることが出来ます。それであれば、こういう風にしますとか出来ます。地域の意見が取り入れられて形になっていく。
 ひじょうにいろんな意見を取り入れやすく、地域づくり、まちづくりが出来るのではないかと思います。
 それこそ「計画策定段階からの住民の参加」が本当に出来るのであれば、実現できそうですね。その3Dでしょうか、かなりコストが高そうなのですがそのあたりはどうなのでしょうか?

 一番コストがかかるところは、立体的な地形のデータを揃えること。これが一番お金がかかります。これはいろんなところで、いろんな人が別の目的でデータをとっている場合があります。


 例えば高知市周辺ですと、同じ国土交通省が、高知港湾空港整備事務所が、津波のシュミレーションをするために、航空写真からそういうデータを持っています。例えば私たちが道路整備など活用させていただければ、かなり安上がりにこしらえる可能性があります。

(写真は仁淀川河口付近です)

 民間で1から製作したら莫大なコストがかかると思っていました。省庁間の交流とか、国土交通省になったおかげで、出来やすくなったということですね。
 
 そうですね、いろんな情報の融通ということも進んできていますね。

まちづくりの議論の道具として使用される「住民の参加」の梯子。8段階あり、最上位は「住民のコントロール」である。

よく「行政と住民のパートナーシップ」と言われますが、実態は「形式的意見聴取」であり、その補完にワークショップなどが活用されているようである。