耐震建物についての知識とは?
 

 今週のゲストは、NPO法人我が家を見直す会事務局長の西田政雄さんです。西田さんは建築関係に詳しく、シックハウス症候群の研究や対策、家屋の防災対策にも高い関心を持たれています。4月から高知シティFMにて「ハッシーと西やんのラジオでつなぐ防災フォーラム」(毎週金曜日6時〜24分)の予定で始まります
 今日のテーマは「耐震建物についての知識とは?」でお話をお聞きします。今年は年明けから「耐震偽装」問題が日本各地で奔出しました。市民の関心も高まっています。
そもそも「耐震建築」とか「免震建築」とか言われていますが、その違いもよくわかりません。具体的な例で説明をお願いします。
建物について少し詳しく説明をします。

1.耐震構造(たいしんこうぞう)

 まず建物には「剛構造」と「柔構造」の2種類があります。建物を壁や梁でがちがちに補強する建物を「剛構造」と言います。 剛構造(強度指向型)柱や梁などを強固にして、建物が変形せずに建物全体が揺れる構造。
 建物をしなやかに柔らかく建築するというのを「柔構造」と言います。柔構造(靱性指向型)建物がしなやかで柔らかい構造・・骨組みにかかる力が小さく、超高層ビルに多く採用。高層ビルはがちがちにしますと折れたりする危険がありますので、「柔構造」にして建築されています。日本の五重塔なども「柔構造」ですね。
 五重塔などは柔構造の耐震建築でしょう。

西田政雄さん

2.免震構造(めんしんこうぞう)


 揺れを小さくする効果のある積層ゴムなど主に建築物の最下層部分に設置し、震度が1あるいは2ランク程度、小さくなる構造・・・定期的にメンテナンスが必要。
山古志でも玉石の上に建つ100年以上の建物が横に移動して倒壊しなかった物も有ったとか、これも有る意味免震だったのでしょう。

3.制震構造(せいしんこうぞう)


 最近の新しい考え方です。外見上は耐震構造と変わりありませんが、建物に取り付けたダンパーなどによって揺れを小さく抑えることができる・・・メンテナンス不要。車で悪路を走行しても、揺れが伝わりにくいですよね、これを想像して下さい。大型の建物でも、免震や制震の建物が多く使われだしました。

 最近県や市は、個人の木造住宅に関して、「耐震診断」をしているようです。 それは有効なのでしょうか?知り合いの設計士に聞きましたら、3日間かかり、責任も重大で大変だとも聞きましたが。。
 地震時倒壊の恐れのある住宅は半数近くあるようです。
 大変な作業だと思います。一応の評価はしています。
 しかし、構造や仕口が異なる建物も一律に評価値を出しますから、完璧な診断とは言い切れません。
 ただ、一つの目安として是非行う事をお薦めします。自分の備えとしてやっておかれるのは良いことであると思います。
 その耐震診断は高知市では、個人の持ち家で昭和57年以前に建てられた木造住宅のみと聞いていますが?
 そうですね。旧基準の木造住宅ということですね。
 高知市にもかなりあると思います。具体的な数字は今日ちょっと持っては来ていませんが、比率は高率ですね。

 耐震診断を受け、耐震補強工事をする場合には、上限60万円の補助が受けられると聞きました。活用具合はどうなっているのでしょうか?
 本年度の活用実績は14棟と聞いています。なぜ少ないかと言いますと、条件のハードルがやや高いと私は考えています。60万円の補助をもらう為に400百万円程度のの工事をしなければならないようです。
 そこまでコストをかけて耐震補強をしなければなりません。それとも200万以内で他の工法を考えるかではないでしょうか。それは自己判断ですね。
テレビ朝日の耐震住宅の実験番組の様子です。(西田政雄さん写真提供)
 西田さんの耐震補強とはどういう工法なのでしょうか?
 知り合いの設計士は「とりあえず崩壊しない1部屋だけ耐震構造にすれば良い」とのことでしたが。行政側の指導では家全体を耐震補強すると何百万円もかかりますし。1部屋だけ、家族が逃げ込む部屋がつぶれないようにするという発想でしたが・・・。
 それもいい方法ですね。岡村先生などもそういわれています。
けんちゃんの知人の発想は、家の中にシェルターを作る考え方と同じです。
同様に、強固な構造の増築なども有効でしょう。全壊倒壊を免れる方法をいくつか取るべきでしょう。
或いは、何かで建物を支えるなど、行政が指導する以外にも いろいろと考えられます。しかし、全てケースbyケースですね。
家屋の被害状況を専門家などが検証している番組のようです。写真は西田政雄さん提供。
 西田さんの定義される耐震住宅とはどういう住宅なのでしょうか?
 一言で言うと「人を殺さない家」でしょうか。それが大前提です。
 それはこれから家を建てる人と。既に建てた人では条件は異なります。いろんな方法が出ています。いろんな方法も出ています。狭い人用のやり方も出ています。
 一つの考えに囚われず、自分の命、家族の命を守る家に直そうとしてください。
優れた耐震性を持つとされる家でも、あくまで想定の範囲であればと言う事です。
天災は、人のそれを上回ることがしばしば有ります。
耐震住宅や耐震補強は、家を守るのではなく、中の人を守る為にと考えています。
地震後の小千谷氏の家屋。西田政雄さん提供 阪神大震災での家具の転倒。神岡俊輔さん提供。
 高知市内の各地域にある避難所は公共の学校や公民館などです。それらはすべて耐震建築なのでしょうか?津波も予想されますが、逃げ込める場所にあるのでしょうか?

 行政の方は言いませんけれども、はっきり申し上げます。
 避難所は「避難する場所では無く、避難生活を行う場所で、直後は個々の判断で安全な所に逃げて下さい。」ということを認識してください。地震が来た時にまっさきに逃げ込む場所ではありません。公共の建物は新しい建物は耐震構造になってきています。
 避難所が万全と言う事では有りません。 全ての耐震化は完了していないが、徐々に進んでいます。
高知市昭和小学校の防災倉庫。毛布とテントが格納。 小千谷市での避難所の様子。西田政雄さん撮影
 そうしますとあとは個々人の判断で逃げ込む場所を想定しなければなりませんね。
 そうですね。なにが来る津波が来るならば、自分達で安全な場所へ逃げ込んで、一段落してから避難所へ行くべきですね。
以前高知市内のはりまや町にお住まいの方からNPO市民会議に電話がありました。「津波が来たらどこへ逃げたら良いのでyそうか?」というものでした。
 私は「高知市総合プラザかるぽーとまでは徒歩で何分かかりますか?」と聞きました。「10分です。」とのことでしたので、「あそこは一応最新の耐震建築ですので、あそこの踊り場へ逃げてください。」と申し上げました。
 ですので、自宅の近くの高い建物の持ち主と協議して、避難させていただくことも大事です。なるべく安全と思われる建物を選定されるのが無難でしょうね。
テレビ番組では地震装置の強度を上げ、実際に家屋を倒壊させ、データを収集していたようです。西田政雄さん撮影。
*耐震住宅問題については、西田政雄さんのblogにて詳しく解説されています。
   
西やんのNPO奮闘記
http://npowagaya.blog.ocn.ne.jp/nisiyann/