東南海地震の規模について
 

 今週のゲストは、NPO法人我が家を見直す会事務局長の西田政雄さんです。西田さんは建築関係に詳しく、シックハウス症候群の研究や対策、家屋の防災対策にも高い関心を持たれています。4月から高知シティFMにて「ハッシーと西やんのラジオでつなぐ防災フォーラム」(毎週金曜日6時〜24分))の予定で始まります
 今日のテーマは「東南海地震の規模について」でお話をお聞きします。次の南海地震はここ30年以内に必ず起こると言われています。しかしわたしなどは現実には十分な対策をしてはいません。
西田さんはいろいいろ独自に調査されていると思います。次の南海地震の規模はどれくらいで、津波なども伴うのでしょうか?
 津波は間違いなく来ます。

 規模についても、南海地震の単独と東南海&南海の同時発生で異なりますが、同時発生の可能性として同時発生も十分考えられます。
 地震の被害につきましては大学の偉い先生達が、壊れる家がどれくらいで、被害予想はこれくらいでとの詳しいデータも出されています。高知県で5万から5万5千世帯が家屋の被害があるという情報になっています。たぶん統計的なもので出されているのでしょう。

西田政雄さん
 南海地震単独と、東南海地震とでは被害状況も違うとは思いますが?

 単独と複合ではエネルギーも違います。よく勘違いされますので、エネルギーがこの間のスマトラ地震でもなんとか地震の何倍とか言われていました。でもそれはエネルギーでありまして、揺れではないです。そこらへんもきちんと理解していない人が意外に多いです。

 また、地震学はどちらかというと新しい学域で、学者によって諸説が有ります。
津波に付いての考え方・・行政は中間的想定で最悪の想定は成されていないのでは?と考えています。
 昨年高知大学理学部の岡村先生とお話しました。「地震なんて何10年か何百年に1回起こるようなもの。1回来るか、来ないかの研究をしても検証ができると想うのかと言われ続けて来ました。それが過去の現状で、阪神・淡路大震災以降、注目されたのですね。

高知大学理学部の岡村教授は現地で調査活動をし、独自の南海地震時の被害予測をされておられます。写真は西田さん提供。
 津波についてですが、高知はどのようなタイプの津波が来るのでしょうか?
 高知県沿岸部は、この間のインドネシアのような津波が来ます。
高さは7〜12mと言われていますし・・・駆け上がり波も、また津波の到達時間も震源地によっては更に短時間に成る可能性も考えられます。
 30分周期で押して引いてと、6時間から9時間来るでしょう。高知市では高見のあたりに4〜5メートルの水の壁が出来るのではないでしょうか?それから大量の水が浦戸湾に入り込んで地震で壊れた高潮防潮堤の隙間から高知市内に海水が入り込みます。いわゆる浸水形の津波でしょう。
 それは1メートルか2メートル浸水するのでしょうか?
 高知市の場合は1メートルか2メートル市内中心部は沈下します。陥没ですね。ですのでそれに海水が入り込んできます。そう思ってください。  
 地盤沈下や、昭和には有った遊水池の減少から、浸水域も行政の発表で納まれば良いのですが・・?
余震も2年近く続くとも言われています。
*行政側が発表している高知市の浸水予想図。今ひとつ実感がわきません。市内中心部のインフラはすべて浸水地域にありますし。
 いわゆる公式見解というのでしょうか?高知県庁の見解、学会などの見解は南海地震はどのように見られていますか?どうなのでしょうか?
 高知県などは京都大学の河田先生などと一緒に被害予想をこしらえていますが、わたしから見まして「過少な被害予想」ではないかと思います。
中央防災会議や高知県発表で、朝5時に発生した場合の全壊棟数は、
揺れ 約 26,700〜 約 28,300  
液状化 約 1,400  
津波 約 12,900 
斜面災害 約 7,500
火災 約 2,100〜約 7,000
合計 約 50,600〜約 55,400   
水門が破損その他で加算 約 4,900
と有りますが、過去の統計的数値と思われますから、私は現状では更に高い数字に成るのではと考えています。
新潟中越地震での被害状況。西田政雄さん撮影。小千谷市街の様子です。
 西田さんの数字ではどうなるのでしょうか?
 学者ではないので、統計を調べているのではありません。やはりこの「公式発表」の1・2倍から1・5倍ぐらいの被害は予想されると考えておかれるべきでしょう。
 ということは現在高知県人口が約80万弱で、所帯戸数が20数万。公式見解でもその4分の1が被害に逢うことです。そうなりますと3分1罹災することになります。
西田政雄さんが撮影された新潟中越地震の罹災地。高知でもいたるところ全半壊の被害が家屋や道路や施設に出ます。
 それは完全につぶれるという意味ではありません。なる可能性が高いということですね。
 西田さんは昨年の「市民がつくる防災フォーラム」のなかで、「次の南海地震は東南海地震を伴う。高知は孤立。港も道路も崩壊し、山古志状態になる。」と言われました。具体的にはどういうことなのでしょうか?
 行政の発表は「中間的」なことしかしません。最悪の場合は、高知では夏の雨上がりや台風襲来後に地震が来れば凄いことになります。
まず国道や高速道路の崩壊や斜面の滑落で陸路の遮断が・・。
次に海岸ですが、津波が押し引きを30分毎で6〜9時間繰り返すと考えられています。海岸線には、倒壊家屋の残骸や、貯木場から流出した木材や係留されていた船舶が・・。
港は使えませんし。例え港の施設が崩壊をまのがれても、容易に上陸する事は困難でしょう。空路では輸送する物資量は知れています。
 それらを除去する大型工作機械も道路や橋が寸断していたら、現場には入れません。ですので高知県全体が「山古志状態になる」と発言した次第です。
家屋の全半壊ばかりでなく、森林比率84%の高知県。生活道である道路の崩壊、崩落は救援活動も困難であります。
 わたしなど防災用の食料と水は「3日分用意する」と思い込んでいました。今日もスタジオへ沢山防災用の備品を持参されています。西田さんの話を聞いていますと高知の場合は、3日間ではなく、もっと長くなるようですが・・
 終わらないでしょうね。今回持参した備品は1週間の想定です。
 救助隊が来るまで、支援物資などが来るまで1週間ということですか?

収録の様子です。机の上のリックに西田政雄さんは、ご自身で選定した「防災用品一式」を持参いただきました。

 神戸と山古志を実際に訪問、罹災した皆さんとの交流からの知識だけにとても説得力がありました。

 郡部はともかく高知市内、市街地はとくに食べ物がありませんから。そのくらいは必要ですね。
 高知市内に水門が各所にあります。わたしの自宅の近くには堀川水門があります。だいたい高知市中心部は地盤が弱く、海抜も低い地域です。現在の高潮防波堤が崩壊、水門が機能しなければ、水没の規模はどう想定されているのでしょうか?
 県の発表では、防潮施設の温存の場合と そうで無い場合の発表がインターネット上で成されています。
京都大学防災研究所:河田教授らと共同で造り上げられた物の様ですが、その水位で納まれば良いのですが・・?
けんちゃんのお宅は、1階部分は水没するでしょうね!
堀川水門。地震時きちんと閉まるのでしょうか? 海岸近くには防災行政無線があります。騒音で聞こえません。
 問題は市民が「ハザードマップ」を見せられても現実のイメージが沸かないことです。わたしなど下知地区の市民はどうすれば良いと思われますか?
 地域で安全と思われる中高層の建物と、被災時の避難協定を結ぶ事です。
安全性に疑問のある建物も有るでしょうが、確実に液状化が起こると思われる地域ですし、遠くに逃げる事が困難でしょう。
しかし、津波と言っても インドネシアで起きた様な高い波が襲うのではなく、高見が関と成っての浸水型と思われますから30〜50分で何処に逃げるかでしょうね。
 また地盤が陥没した上での浸水ですので、、水は引きません。桟橋や高知市中心部、下知地区は地盤が全体が1メートル沈下します。それで浸水しますので、現在の1階部分は水浸しになることを考えるべきですね。
 地震に詳しい高知大学の岡村教授の見解はどういうものなのでしょうか?おかまいなければご紹介下さい。
 岡村先生とは、よく情報交換を行いますが、行政発表の数値や見解にはお互いに疑問視しています。
ハッキリ言うと、過小評価であると行っても過言では有りません。浜沿いでしたら「駆け上がり波」も起きます。

 ですから「オーバーでもいいではない。」「オオカミ少年でも良いではない」それで来なかったら良かったではないかと思うべきですね。

 高知大学理学部の岡村教授は地層の研究もされています。写真は西田政雄さん提供。
 危機管理とは「最悪の事態を予想。そうならないために手を打つ」ことだと思いますが?
 それは最悪ではないでしょう。平均的なものでしょう。地震学者はそこまで出せないと思います。