ユニバーサルなまちづくりとは?
 今週のゲストは、くろしお地域研究所研究員の松田高政さんです。今日のテーマは「ユニバーサルなまちづくりとは?」でお話をお聞きします。
街には乳幼児から、高齢者、障害者も住んで、生活しています。先般のアメリカ南部を襲ったハリケーンでは、高齢者や障害者の方が罹災地に大勢取り残され社会問題になりました。誰にとってもやさしいまちづくりは可能なのでしょうか?
地域に居住している住民各位のまちづくりプランへの参加が大切であると思います。またつくられた計画に関心が高くないといけないと思います。松田さんはどのような手法でされるのでしょうか?
 計画づくりには調査をします。
基本的に調べた人しか詳しくならないので、できる限り参加者を集って一緒に調査をします。また、何かの理由で「参加できなかった・しなかった人」にも「情報を共有する」ため、途中経過の情報もできる限りオープンにします。
 結局、一緒にやるか、情報を共有化して疑似体験のような状況をつくらないと、せっかく多くの方が参加してつくった計画であっても、思いやメッセージは分ち合えないと思います。
 松田さんのblogでは「乳幼児親子、小学生、障害者と一緒に調べた商店街の魅力」ということで、愛媛県愛南町城辺商店街で、ワークショップをされてように掲載されていました。
 住民の意向をうまく情報収集はできましたか?皆積極的だったのでしょうか?
 今回の取り組みはすべて、民間のボランティア団体が自主的に行ったことで、みなさん、はじめから目的意識が高く積極的でした。お母さんがたは夕方になると夕飯のしたくをしなければならないので、時間内で終わらないとということで、それまで一生懸命になっていて、その集中力と熱意はすごいものがありました。
愛南町でのワークショップの様子です。
集合写真です。(写真は松田高政さん提供)
 

 障害者や、高齢者や乳幼児を家族がかかえていますと、外出へのエネルギーがかかります。地域のつながりや、互助も必要であると思います。そのあたりはどうだったのでしょうか?
 障害者や乳幼児の親子が、外出をしてみたいと思えるような居場所がもうすでに商店街の空き店舗を利用してできています。福祉関係のボランティア団体の拠点にもなっています。みなさんの思いは、自分たちの拠点や居場所づくりで終わることなく、地元の商店街や行政とつながりを深めて、「すべての人にやさしい街づくり」、ひいては商店街の活性化まで視野に入れて活動しています。
 商店街の近くに、精神障害者のグループホームもあり、障害者や乳幼児の子どもが、街の生活を楽しむためには、街の人と仲良くなった方がいいし、仲良くなれば、今度〇〇するから協力してくれませんかとお願いしやすい関係もできます。ボランティア団体の方も協力しやすい関係をこしらえています。
 今回の試みは、おっしゃられるとおり、地域とのつながりや互助の関係を築くために、やったことでもあります。
 たしかに「バリヤフリー」という言葉をよく聞きます。
 消防署や役場などふだんあまり出かけない場所が、「バリヤフリー」になっていましても利用することはあまりありません。むしろ商店街や飲食店、映画館、パチンコ店などや公共交通機関がバリヤフリーにならないとなかなか高齢の方や障害をもたれた方の外出は難しいようです。そのあたりはなにか打開策はないのでしょうか?

 はりまや橋商店街で「磨き備長炭」やお寿司あんど販売されているOPEN HEART(重度重複の障害のある子供たちが豊かな地域生活を送るために必要なことを支援する会)の皆さんです。

 はりまや橋商店街は、バリヤフリーな商店街に意識の上でもなりつつあります。


 愛南町城辺商店街を調べてわかったことは、街の中に、商店街の空き店舗が増えたこともあり、福祉関係の公的施設や乳幼児親子の集いの場、障害者のグループホームなどが多く立地しています。そのため、バリヤフリーを必要としている高齢者や障害者、乳幼児の親子などたまに歩いている姿を見かけます。
 昔と比べ人通りの少なくなった商店街といっても、まだ街を必要としている人が歩いています。今、一番問題になっているのは、この商店街をバイパスの抜け道として、朝スピードを上げて突っ走る自動車の存在です。
 そのため、福祉のボランティア団体は、自分たちの安全のためにも、商店街を活気あるものとし、わがもの顔で走る自動車のスピードを止めたいと願っています。そのほかにも危険な場所がありましたが、ハードの整備よりも街の魅力を発信し、多くの人に来てもらって徐々に車が通りにくくするソフト施策を考えています。
低床式バスです。車椅子のマークが表示されています。
低床式路面電車ハートラムです。
 かつて高知県政策総合研究所は「ユニバーサル・デザイン」で数年間研究していました。高知県のまちづくりで影響を与えたのでしょうか?
 車の台数やスピードをいかに抑えるかをいう話しをしましたが、政策総研のユニバーサル・デザインの研究は公共交通、特に路面電車の重要性を多くの人に知らせてくれたと思います。高知市は路面電車の歴史があり、この路面電車をもっと充実させれば、運転免許を持っていない人が街に行きやすくなるし、車の渋滞や商店街の駐車場問題なども解決できると思います。
 ただし、そのためには大規模な公共投資をしなければならないので、事業主体者はもちろん、今の行政に今すぐ期待しても難しいと思います。時間はかかるでしょうが、行政に頼らず市民の力で、今ある路面電車の楽しみ方や路線バスとの組み合わせなどを提案しながら、事業主体や行政を徐々に動かしていくしかないと思います。
商店街を車椅子体験で廻りっています。
低床式バスは車椅子でも容易に乗降できます。

 地域の「ないものねだり」をわたしたち田舎者はしてしまいがちです。町田さんは「あるもの探し」をすることが大切であると言われていますが。
 私も田舎で生まれて、田舎で成長してきました。なんで高知に生まれてきたのだろう。と思うこともありました。せっかく高知に生まれてきて高知で生きる理由を考えました。
 自分のおじいちゃん、おばあちゃんが高知で生きてきましたが、高知の自然やあるものを生かして農業などで暮らして来ました。そういう考え方を見習いたいと思います。地域のあるものを活かして仕事をしたいと思います。
 
「車椅子利用者の海水浴」(NPO法人あきらめないで主催)の2004年の様子です。
10月番組に帰ります