災害弱者の救援活動は?
 今週のゲストは高知市消防局警防課の神岡俊輔さんです。今日のテーマは「災害弱者の救援活動は?」というテーマでお話を伺います。
 一般的に高齢者や障害者、病院の入院患者などは「災害弱者」と言われています。大災害の際、被害を受けやすい人達です。どのような対策がされているのでしょうか?
 2001年の土佐清水市の大水害では、死者が1人もいませんでした。地域コミュニティが健在で、1人暮らしの高齢者、病気の人達を優先的に救助したからだと言われてい ます。そのような共助の形が理想なのでしょうか?
ご指摘のとうり、こうした地域のコミュニティのしっかりした地域は災害に強い地域だと言えます。阪神・淡路大震災時の淡路島の北淡町を例にとりましても、潰れた家のどの部屋で誰が寝ているのかまで周囲の人が知っており、素早く確実に人のいる部屋への救出活動が行えたことから、その日のうちには死者も含めてですが、行不明者全員の救出を終えています。

 一方神戸市のような都市部では、地域同士の繋がりが弱く、行方不明者の救出活動は1週間を経ても終わっていませんでした。北淡町とは被災者の数が全く違いますが、的確な情報がなかなか集まらず無駄な活動も多かったようです。

介護施設や老人保健施設の救援活動は大変困難であると思います。施設側には自主防災組織があるのでようか?また訓練などされているのでしょうか?
病院や施設での防災訓練の様子。七輪と炭の活用もされています。
 病院や介護施設、老人保健施設などは、消防法でも特に防災施設などの設置義務や、点検義務が厳しく定められています。またこれらの施設は年2回の以上の防災訓練が義務づけられています。
 しかしこれらの訓練は主に火災からの避難対策がメインであり、地震対策を視野に入れたものではありませんでした。最近東南海、南海地震の発生の危機が叫ばれるようになったからは、国もやっと南海地震を視野に入れた法律を整備し、昨年12月、高知市も地震防災対策の推進地域に指定されました。

 このなかで「津波による浸水が予測される」地域にある事業所、先の社会福祉施設も、含まれますが、その従業員や顧客も津波から安全に避難する計画を作成するようにも義務付けられました。
 また高知市の地域防災計画でも、災害時要援護者対策は盛り込まれており、先の社会福祉施設や病院などの寝たきりの高齢者、体の不自由な高齢者、身体障害者、乳幼児といった災害時には自力避難が出来ない人達の安全を図るために様々な災害対策が盛り込まれています。法整備に合わせた見直しも必要な時期に来ています。

高知市内に、いわゆる「消防団員」は何人いますか?数は地域をカバーするのに足りているのでしょうか?消防団員の所属する地域の災害弱者を把握されているのでしょうか?
 現在高知市には25分団あります。消防団員の人数は高知市の条例では664名必要です。人数的には現在の実員は615名です。内女性団員は46名居ます。
 人数的には消防職員の2倍ほど居ますので、職員とあわせますと1000名近い消防関係者がいます。l
 地域の災害弱者を把握しているかですが、団員さんのなかには地区の民生委員を勤られている人もいます。また地域を良く知っている方々ですので、ある程度は把握していると思われます。
 ボランティア組織や災害時NPOとの連携については、いかがでしょうか?
消防団員以外にマンパワーはあると思われます。また中学校や高校を防災拠点として活用し、生徒を救援活動のマンパワーとして活用することは考えられてはいないのでしょうか?愛宕中学校の事例は伺いましたけれども。
ボランティア自主防災組織も活躍しています。
 ボランティア組織である自主防災組織や、NPOの防災ボランティ団体との連携は、毎年6月に組織している「高知総合水防訓練」で訓練ともに実施しています。
 また実際の災害になると、地域の小中学校は防災の拠点施設として、多くの人達が集まり、たくさんの情報がもたらされます。将来の高齢化社会を襲う震災を考えると、その時、その場に居る小中学生も防災活動の上で重要な存在となります。
 私は元気であれば、小中学生も避難所で毛布にくるまっているだけではなく、積極的に現場へ連れ出し、救出や消火活動を手伝わすべきだと考えています。

 そのため、今後の重要な施策として、将来必ず震災に遭うであろう、この子供たちへの防災教育があげられます。防災教育はその成果が、子供さんを通じ地元へ波及し、結果地域の防災力が向上することにつながってゆくものでならないと考えています。そのための基本的な考え方として

 

小学生は地震に対する正しい知識を身につけ、まずは自分の身を守ること。

中学生・高校生は地域を守る一員であることを自覚させ、訓練により消化、救助、応急手当を学習し、いざ発災時は自ら率先して地域の人達とともに、防災活動を行えるように育てておくことではないでしょうか。
 将来の高齢化社会を襲う震災を考えると、大人も子供もなく総力戦で立ち向かわねばならないからです。

 先日の新潟県での大水害でも自宅で寝たきりの人が、洪水での水でベットの上で水死する事故がありました。防止対策は出来ないものなのでしょうか?
 そうですね。これは地域の繋がりコミュニティだ大事だと思います。
 平成13年9月6日に未明に高知県西南部を襲った豪雨災害では、1105棟の家屋に被害が出たにもかかわらず、死者は1人も出ませんでした。この奇跡的とも言える事実は、 住民や地元消防団勇気ある素早い救助活動の結果でもありましょう、基本的には日頃からの地域の信頼関係のあった賜物だと思います。

神岡俊輔さん提供の資料です。

「生き埋めの際、だれが注意したか」という調査では、いかに自助、共助の必要性が大事かと思い知らされました。

 災害弱者を救助する対策や事業計画は消防にはありますか?おかまいない範囲でご披露下さい。
   
 消防局では、すべての署や出張所が「防災訪問」という調査を行っています。これは一定の基準より対象者を絞り込みますが、主に1人暮らしの高齢者や身体に障害があり、避難能力に欠ける人などを対象に、1月に1回調査を行い、災害時には優先的に安否の確認に出向くようにしています。

 災害弱者の生死を分けるおきな要素は、やはり「日頃の地域での付き合い」と言えるのではないでしょうか?

 阪神・淡路大震災の事例です。たくさんの家屋が倒壊しました。その場にいる人達も優先順位をつけて救助します。一番は自分の肉親。仲良くしている隣近所の方。
 やはり日頃からトラブルを起している人は、やはり優先順位は低いようです。一番悲惨な状況は、地方から神戸へ出てきて下宿している学生が「忘れられた存在」になっていたようでした。
 また、笑えない話ですが、家賃の額によって生死が別れたと言う事実もあるようです。家賃の低い木造アパートに住んでいた人は建物が崩壊し亡くなり、家賃の高い鉄筋コンクリートのマンションに住んでいた人は助かったということです。