南海地震とどう向き合うのか?
 今週のゲストは高知市消防局警防課の神岡俊輔さんです。今日のテーマは「南海地震とどう向き合うのか?」です。伝え聞く情報では、来る南海地震は30年以内に発生する確率が高く、規模は阪神大震災の倍と言われています。低地と軟弱地盤、海に近い高知市。
 どうすれば良いのでしょうか?
 大地震が発生した後、約30分で、大津波が襲来すると言われています。低地の多い高知市。高台の避難地はどうなっているのでしょうか?
さきほど、阪神・淡路大震災の倍と言われましたが、次の南海地震は、マグニチュードの規模で言えば阪神・淡路大震災の64倍です。昭和の南海地震に比べても4倍の大きさです。揺れる時間も桁外れに長く、阪神・淡路大震災は13秒ほどでしたが、南海地震は100秒から120秒揺れると予想されています。

 高知市には。地震や津波からの避難だけを想定した高台などの避難施設はありません。ですが、南海地震による津波による危険性が高い浦戸地区では、住民の皆さんが危機感を持って自主防災組織を結成し、裏山へ避難地を整備し、そこへいたる避難路も自分達で整備しています。高知市も補助金などの形で支援しています。

 しかし高知市中心部では適当な山もなく、また高知市が避難場所を新たに作ると言ったことは現状では非常に困難な状況です。南海地震は明日起こっても不思議ではありませんので、町内会や自主防災組織単位で、地域の高いビルを持つ事業所やマンションなどへ、津波の際は一時的に避難させてもらうよう、申し入れなどをしておくことも必要だと思います。

南海地震は、倒壊、火災以外に津波という脅威があることを忘れてはいけません。
 水害などでは高知市内の小学校やふれあいセンターなどが避難所に指定されています。
地震に対してはその避難所は大丈夫なのでしょうか?(耐震構造で高台にあるのでしょうか?)
 こと地震で考えるとご心配だと思います。
 高知市の避難場所としての多くは小中学校です。そのうち校舎と体育館合わせて180棟あります。うち地震の際危険だとされている昭和56年以前の古い建築基準で建てられた建物は122棟。そのうち、耐震補強が終わっているのは僅か11棟です。耐震診断のみ終わっているのは22棟ですね。(平成15年度現在)
 教育委員会も、2025年(平成37年)を目処に、順次,建て替えや補強工事を進めてゆく予定ですが、財政事情も厳しく課題が残ります。

 しかしその前に、皆さんのお宅の耐震性は大丈夫でしょうか。阪神・淡路大震災での犠牲者の死因のトップは圧死です。いわゆる倒壊した建物の梁や柱、家具の下敷きにより体を圧迫されて亡くなったのです。したがってご心配の避難所の耐震性も重要性ですが、地震に遭う確立は自宅に居る時が一番高くなります。食事や就寝などで自宅に居る時間が長いのですね。自宅が潰れないようにしておくことが、一番大切です。
 死んでしまえば避難所は必要なくなります。

昭和56年以前に建築された木造住宅は地震で倒壊する可能性があります。耐震診断を早めに受け、耐震補強を早急にしなければなりません。

 

(資料は神岡俊輔さんに提供いただきました。)

高知市で安全といえる場所はありますか?
そうですね 高知市周辺の、山を削って開発した高台にある比較的新しい住宅地は比較的安全でしょう。こういったところは比較的地盤が硬く、地震の揺れにも強いです。また標高もありますので。津波からの危険性も低いでしょう。
 逆に高知市中心部は軟弱地盤が多く、揺れも大きく、地盤沈下も発生します。津波被害も発生しますので、不利な土地と言えます。
 一番大事なのは予想される次の南海地震の正しい災害情報の知識を市民が持つことですね。同時に震災が起こったときに正しい情報を把握しななければならないと思いますが・・・・そのあたりはどうなっているのでしょうか?
高知県の資料。赤い場所が浸水予想箇所。
高知市の資料。カラーの箇所が浸水予想箇所
堤防が壊れ、水門が開いた想定です。
こちらは堤防と水門が機能した場合です。
 
 まず南海地震。すみやかな避難が必要なのは津波です。昨年中央防災会議が発表した被害予測によりますと、高知県の死者は最大6200人。そのうち津波による死者は7割にあたる4200人だとされました。これをみても津波がいかに怖いかということがお分かりになると思います。
 南海地震による津波は地震発生後、30分以内に高知市の沿岸に到達します。その時の津波の高さは、浦戸湾の湾口あたりですと津波の高さは、8メートルから10メートルぐらいあるのではないかとされています。とにかく高いところへ素早く逃げるしかありません。逃げる時間は30分しかありません。
 30分と言いますと結構長いように思われますけれども、こういった場合、震災の場合は道路はいつもどうり通行できるとは思わないで下さい。阪神・淡路大震災の写真をご覧になったこともあるかと思いますが、電柱が倒れ、道路が陥没し、建物の倒壊などで道路を塞ぎます。こういう状況ですので、避難にはいつもの3倍の時間がかかると思ってください。夜であればなお更です。

 そのため特に津波に対しては「揺れたら逃げる」「早く知って、早く逃げる」ことが一番重要です。とくに地震情報や津波情報などをいち早く特に危険地区の住民の皆さんに伝えて、すばやく避難していただくために、平成8年度から固定系の防災行政無線を整備してきました。
 現在土佐湾沿岸と浦戸湾沿岸を中心に96基整備が終わっています。電柱の上にスピーカーが4つ取り付けられています。気象衛星や市役所に設置してある地震計などの情報をもとに24時間体制で、地震情報や、津波情報を自動的に放送するものです。地域の皆さんはこの放送を聞き、避難の目安にしていただきたいのです。

 津波からの避難は1分1秒を無駄に出来ません。最終的には、自分で判断し、「自分の身は自分で守る」というという姿勢が必要です。

 地震の襲来が避けられないとすれば、市民として対策はどうすれば良いのでしょうか?神に祈るしかないのでしょうか?
収録の様子です。現場の体験や、豊富な関連資料をもとに、簡便に南海地震の全体像を話していただきました。
 一番先にお願いしたいのは、先にお話した自宅の耐震補強です。
 また自宅ですぐに出来る対策としては家具の固定が挙げられます。家具の固定の大切さは、もう皆さんご承知だと思います。震度5を越しますと家具が転倒し始めます。阪神・淡路大震災ではただ倒れるだけでなく、食器棚などは扉が開き、なかの食器類が床一面に割れて散乱します。テレビや電子レンジは宙を飛び、200キロ以上もあるピアノが天井に当たった痕があったなど、日常では考えられない現象が確認されています。
 たとえ建物が無事でも、家具の下敷きになって大怪我をしたり、出口に家具が倒れこみ逃げ道を塞がれたりと、家具を固定していないと思わぬ危険が隠れているのです。

 また町内会などで自主防災組織を結成し、組織的な防災活動が出来るようにしておくことでしょう。