日本の政治改革の進展具合は?
 今週のゲストは参議院議員の平野貞夫さんです。今日のテーマは「日本の政治改革の進展具合は?」ということでお話を伺います。
 平野さんは大学卒業後33年間衆議院事務局に勤務されていました。また平成4年からは参議院議員として自民党、新生党、新進党、自由党、民主党と歴任されました。日本政治の裏方と表舞台双方におられました。
 [政治改革]論議が叫ばれて久しいですが、日本の政治改革は進展しているのでしょうか?
まず伺いますが、政治改革として具体化しましたのは衆議院選挙制度の改革です。
「小選挙区比例代表並立制」は成功したといえるのでしょうか?
 点数をつけますと70点です。実は選挙制度というのは、パーフェクト(完全)なものはないですね。そこでそもそも小選挙区比例代表並立制は、「与野党の妥協の産物」なのです。
 ようするに参議院で否決されました。両院協議会で「ぐにゃぐにゃ」にして出来たものです。そういう生まれなものですから70点という点数をつけました。
 ただ70点でようやく成功と見てみます。自民党は別にしまして、他の政党は、やはり選挙に、政治家になるのにお金がかからなくなりました。これははっきりいえますね。ただ選挙制度をよりよくするためには、直さなければならない点が沢山あります。
 その点は率直に私は認めますが、一定の成果は出ています。これからその成果が出てくると思います。
  自由党が民主党と合流したのも小選挙区比例代表並立制による「二大政党」傾向を意識されたからなのでしょうか?
 政党というものは何かということについて、最近若い人を中心に、認識の仕方イメージのとり方が異なってきています。それで正確に言いますと、2大政党で政治をやるというよりも、「2つの政治グループが政権交代をしあう」ということです
 ひとつの政治グループのなかに、ネットワークされたひとつのものがある。そこは柔軟に考えたら良いと思います。政党の党という言葉は、日本語ではイメージは悪いですね。
 「徒党」とか、[野盗」とか泥棒の集まりみたいですからね。ですから日本で最初に政党をこしらえた時には「愛国公党」というふうに、「公」という字を党の上につけたんですね。だから党というイメージは若い人の発想で柔軟化したほうが良いと思いますね。
 2つの政治勢力による政権交代。それが議会政治のありかたです。 平野貞夫さん
 党と言いますと従来は[利権集団のまとめ役」というのと、野党は「中央主権的な個人の自由が抑圧された組織政党」というイメージしかありませんでしたが、それは違うんだということですね。
平野さんが所属されている参議院について伺います。独自の役割はありますか?
年間選挙がないことはじっくりと政策課題が追求できるとは思うのですが・・・・。
 個人個人で言いますといい参議院議員も沢山います。しかし一般論でいきますと日本の政治を悪くしているのは与党自民党の参議院議員です。だから衆議院の自民党のボスより、参議院の自民党のボスのほうが犯罪が多いでしょう。

 井上議長とか、村上議員とか。ボスの人が沢山いましたね。参議院議員の人格と言うものが、ひじょうに悪くなっています。まさに参議院こそ[人格のある人」がなるべきなのにです。
 団体や組合、業界の代表者、代弁者が多いですからね
 議会政治でモデルとすべき国はありますか?イギリスや欧州などが先進事例なのでしょうか?やはり欧州は日本にくらべ格段に進んでいるのでしょうか?日本の国会とどのように違うのでしょうか?
 国会だけを比べましても回答は出ませんね。国会を支えている政治文化の違いがあるからです。簡単に言いますと、先進国、欧州の議会は[教会がもと」なのですね。
 中世では教会が社会を支配していました。宗教改革が行われて、政治社会の活動は宗教と別にしなければいけないということで、[社会的教会」が議会なのです。
 ですから教会のルールが議事規則なのです。したがって精神を安定する教会と、社会の利害を調整する「教会」が議会です。
 議会では絶対に嘘はいいません。それは神様に嘘をつけないからです。それから徹底的に少数意見を聞きます。言わさせます。その上で多数決をします。日本はどうでしょうか?決定的に違うのはそこですね。
 日本は1神教ではありません。多神教ですね。八百万の神だからね。日本の議会はたかだか130年ぐらいだから。日本の官僚や利権を争う不真面目な政治家は、国会でいかに「嘘をつくか」が政治家の高い能力なのですね。
 ですから全く違います。またアメリカの議会で、米軍兵士によるイラク人の虐待事件がありました。与党の共和党が真相究明をと言いました。日本では今の自民党と公明党は自分達のスキャンダルが出て困ったら、絶対に議会で問題にさせませんね。多数決で[議論を封殺」してしまうからです。多数決原理と言うのはそういう時に行使しては駄目なのですね。議論を尽くした上での最後の手段なのですね。

 少数意見を言わさせる時などは、日本人は本質的にまだ議会のよさを知りません。若い人はぼつぼつとわかってきたようですけれども。長いものには巻かれるとか、お上(役人)の言うことは、なんでも聞けと心がまだ残っているのですね。日本人の精神がもう少し合理的になりませんと日本の議会は良くなりません。

2004年7月26日にて、12年3期の参議院議員を引退される平野貞夫さん。平野貞夫さんの最後の質問や、特集が各メディアに掲載されていました。

 投票率の低さとか、政治意識の低さは、日本の場合は政治文化が低いからなのでしょうか?
 もっと苦しまなければわからないでしょうね。でもみんなの意見で政治をやることは変えることは出来ないでしょう。独裁者が政治をやるわけには行かないでしょう。議会をやめるわけにはいかないでしょう。
 政治文化の違い、教会のバックボーンも違いも理解できました。政治改革は、政治文化から再構築すると言うことなのでしょうか?
 政治の倫理、議会の倫理をどうするかということです。申し上げたいのは日本の議会は土佐人がつくったものですからね。これはジョン万次郎、坂本龍馬、通じて五箇条のご誓文、植木枝盛、中江兆民、板垣退助など。土佐人は議会のルール作りを行う責任があるんですよね。
 その土佐人がかなり狂っている。国会に選出される人を見てもそう思いますね。
 ポリティカルカルチャー(政治文化)の問題もありますね。問題なのは投票率の低さです。
 これは難しい問題ですね。戦後60年見てきまして、ここのところ激しく有権者の意識が変わっていますね。20%ぐらいは全く政治が嫌いな人が世の中にいます。
 この人達はしようがない。けしからんとも言えません。ある意味でデモクラッシーの健全性を表していますので。問題は後の80%ですね。だから投票率の悪い時は[組織票」で当落は決まりますね。いわゆる「無党派層」が40%います。
 これが最近は[無党派層」と「新無党派層」に分かれました。[新無党派層」は実は猛烈に政治に関心が強いのです。政治に関心が強くて[棄権」する場合もあります。
 これで半々でしょう。この人達が真剣に、国のこと、社会のこと、地域のことを考えてくれたらなと思います。あと5%投票率が向上すれば、「組織票が」機能しなくなります。
 

35年ほど前の日本。形はどうあれ青年たちは政治に関心を持っていた。現在その人達は「定年」を控えた世代。

なにか行動を起すのだろうか?