メンタルヘルス支援について
 
今日のゲストは、メンタルヘルス支援の活動をされている、産業カウンセラーの宮川裕子さんと、
副理事長で産業カウンセラーである松木瑞さんに来ていただきました。
今日はキャリアコンサルタント協会の活動の中の「メンタルヘルス支援ー心の健康作り活動」についてお聞きします。
まず、どうして心の健康作り活動に取り組むのか、その思いをお聞かせください。
 
はい、最近(益々複雑化する社会環境の中で)心を凍らせるような事件が多発していますね。今ほど、心の健康作りの必要性を感じていることはありません。
産業界でも長引く不況等により、労働者に与えるストレスは厳しいものがあります。このような中、「仕事や職場,生活に強い不安、悩み,ストレスがある」と訴える労働者の割合は年々増加しており、心の健康問題が労働者や家族,事業所及び社会に与える影響は今後益々大きくなっていくと心配しています。労働者と家族の幸せ,社会の健全な発展の為にもより積極的に心の健康を守り高めていくことが大切と今,強く思い、「心の健康作り」に取り組みたいと思っています。
  宮川裕子さん
 
実際現場からみてどのように感じられましたか?
私が働いていた会社でも、「うつ病」や「心身症」等心の病気で休職される方,職場に適応できず、悩んでいる人が沢山いました。
そのため仕事の能率が低下し,職場内の人間関係が益々悪くなったり、ストレスで集中力の欠けた社員さんの運転で、重大な事故を起こしそうになったこともありました。
このように、ストレスが高い状態を放置していますと、仕事の生産性の低下や、病気になったり、些細なミスが重大な事故を発生させる危険性も高まります。
そこで事業所は、「心の健康作り」活動に積極的に取り組み、病気を予防したり、明るい活気ある職場作りをすることが大切と思います。
それでは具体的にどのような活動をする事が必要でしょうか?
はい、それは働く人や管理者がストレスや「心の健康」について理解し、また本人や部下のストレスサインに気付く為の研修をしたり、部下の話を上手に聴く為の研修をしたり、いつでも気軽に相談できる相談室(カウンセリングルーム)等の設置が大切と思われます。
それではキャリアコンサルタント協会における産業カウンセラーの役割は何ですか?
そうですね、現在働いている人、またこれから社会に出て働こうとする人が個人的・社会的技能を身につけて
様々な問題解決能力や,意思決定の能力をよりよく引き出す事をお手伝いする、といったところでしょうか。

カウンセリングについて簡単にいいますと、これは殆どの人が思い当たると思いますが、嫌な事や悩み事なんかがあると「誰かに聴いて欲しい」と思ったりしますよね?でもその悩みを話した相手が人生論やお説教をはじめたり・・、っていうことありませんか?
例えば会社の上司に「何だか最近会社に行きたくなくて・・」みたいな話をすると「何を甘えた事を言ってるんだ!世の中には大変な苦労をしながら頑張っている人が大勢いるんだぞ、そんなやわな考えでどうする!」みたいな・・。
確かにその上司の言っている事は正しい、実にごもっともな意見なんだけれども、話したこちらはどうもスッキリしない。
この先そんな上司に愚痴や(愚痴までいかずとも)安心して悩みを話したい、と思うでしょうか?いかがですか?
そうですね〜いきなりお説教なんかされると確かに嫌になりますね
やはりまずじっくりと自分の話を聴いてくれる人に話したい、と思うんではないでしょうか?
この場合ですとカウンセリング或いは、上司の聞き方によって「どれ、がんばっていこうか」となる人もいるでしょうし、会社の人間関係がうまくいかない、とか、実は家族の誰かに問題があって、そちらが気にかかり会社までエネルギーが回らないことがわかるかもしれません。
また「やはり自分が悪いのだ・・」と正確な自分に関する判断が出来なくなったりもします。「うつ病」等が考えられたりする人には自分を追い込みすぎて最悪の場合は「自殺」という危険性も含んでいます。
なるほど
人は自分の気持ちを「しっかり受け止めてもらえた」と感じた時はじめて問題を解決する力や,自分の責任で自分の意志を決めていく力が湧いてくるんですよね。
なるほど、カウンセリングというのは単なる人生相談みたいなものではない、ということですね。
まったく違います。
実際カウンセリングをして相談者がどのように変わったか話していただけますか?
40歳の女性が「会社を辞めたい」と訴えて相談にきました。お聞きしてみると「食べれないし,夜も眠れないし、しんどい、と訴えました。
よくお話を聴いてみると職場の異動で慣れない仕事で自信を失い、またその上その悩みを聴いてくれる仲間もいない為、すっかり落ち込んでいました。
カウンセリングを重ねる中で、話をじっくり聴いてもらったことで気持ちが楽になったこと、自分は完璧主義であり、仕事に慣れず、思うように仕事ができず,自分は今まで皆に認めてもらうくらい立派に出来ていたのに、立派に出来ない自分が情けなく落ち込んでいたことに気付き、少しずつ仕事に慣れて良い仕事が出来るようになれば良いのだと思うようになったことで、すっかり元気をとりもどしました。
松木瑞江さん
なるほど、働く場においてもカウンセリングというのが大切なのだとよくわかりました。
ではこのキャリアコンサルタント協会の仕事とはどうリンクされるのでしょうか?
この協会は単なる就・転職の斡旋や紹介事業ではありません。
初日の溝渕理事長の話にもありましたが、当協会はこれから働こうとする人により良い選択をしていただく為のお手伝いが大切な仕事です。
しかし、納得したうえで仕事を得ること全てOKというわけではないのです。

やはり先程も言いましたが,現在働いている人たちの「心の問題」を無視するわけにはいきません。
リストラや社内の人間関係、セクハラ、またアルコール等による問題等など、沢山あると思います。
私たち産業カウンセラーが担うのはこの部分なのです。
わかりました。では今後具体的にどういった活動を予定されていますか?
まず個人を対象としたカウンセリングは勿論ですが、また職場の管理監督者の方々とその部下の方々の職場不適応に関する疑問や不安、及びそれに対してどのように対応していくかについて共に考える、といったコンサルテーション活動等もあります。

また、ストレスや心の健康に関する教育活動等もあります。