日本人として、「発想」に行き詰まりそうになった時は、「沖縄から見て考える」ことをすれば良い。過去の知識人もそうだったらしく、柳田邦男だとか、吉本隆明なども沖縄に言及している。もっとも彼らの著作は難しいので、学生時代に「通読」はしても、頭には入力されてはいない。
ただ過去の歴史でも沖縄は日本史の節目に必ず登場している。琉球王朝が交易で栄え、後に西欧諸国の台頭でかつての栄華も色あせかけつつあった頃、薩摩藩に軍事占領された。関ヶ原で破れた島津は殆ど領地も削られなかった。むしろ琉球占領の取引を幕府と交渉していた。やがて鎖国時代になるも,琉球は「日本ではない」という建前で貿易がある程度できた。幕末の薩摩藩は琉球からの収奪を通じて,力を蓄えていたのだろう。
玉城朋彦氏の著作にも指摘されていたが、幕末に江戸幕府に「開国」の交渉に来ていた米国海軍提督ペリーは、浦賀へ来る前後に琉球に長期滞在している。ペリーは交渉が不調の場合は、琉球を軍事占領する許可願いを,当時の米国大統領に申請していたとか。その頃からアメリカは沖縄の「重要性」「戦略拠点」としての認識を持っていたのだろう。
(米軍はなんのために沖縄にいるのか)
問題の海兵隊基地を日本本土に「誘致」しようとしても,アメリカは断固「ノー」と言うだろう。沖縄は日本、朝鮮半島、中国、台湾、フィリピンに近い。「太平洋のキーストーン」と呼ぶ重要な戦略拠点と認識されている。日本政府の「思いやり予算」のおかげで、米軍は居心地が良いのだろう。アメリカの植民地とでも「県知事を弱虫」とメールに書いた米軍司令官は思いこんでいるのに違いない。
「事件」をおこす頻度の高い海兵隊。米軍の沖縄での犯罪の七割が海兵隊だと言われている。司令官がその程度だから、事件を引き起こす当事者は20歳前後の若者である。「成人式」で騒いだ日本の若者の一部と似たようなものだ。
海兵隊は急襲部隊であり、守備要員ではない。戦傷率も高い。朝鮮戦争,ベトナム戦争、湾岸戦争でも沖縄駐留の海兵隊が派遣されている。でも一番重要な任務は、「日本」を軍事占領すること。日本の台頭を押さえること。アメリカに反抗しないようにするための存在であること。
基地があることは、「敵」から攻撃される可能性がある。沖縄には120万人の住民が居住している。米国軍隊に「居心地」がいい沖縄は、住民にとって住みにくい場所である。義母が日頃言われていた言葉を思い出す。
(迷惑設備と地場産業)
米軍基地は沖縄の人々にとって巨大な迷惑施設である。犯罪,騒音、生活への規制。一方で地場産業であることも事実。地代収入、雇用を生み出している。失業率が日本本土の常に倍ある沖縄では、米軍基地は優良事業所のひとつである。基地があるゆえに,関連の雇用はあるが、基地があるゆえに都市づくりや、産業振興面の制約もある。日本政府がいくら沖縄に公共事業を増やしても,米軍基地があるかぎり矛盾は解決されない。
橋本内閣時代に「矛盾」の解決のために「沖縄全島フリーゾーン構想」が真剣に検討されていた。実現するやに思えたが、橋本内閣は退陣、構想は後退した。小渕内閣の折、沖縄サミットが提唱された。公共投資主体の従来型経済の延長でしかなかった。沖縄サミットは「まちおこし」につながらず幕を閉じた。「迷惑施設」である海兵隊基地の移転問題で沖縄世論は分裂している。名護市の移転予定地付近の海で、天然記念物のジュゴンの生息が確認されたので、よけいに困難さを増している。
解決さが困難さをましている沖縄の基地移転。「基地がなくても自立できる経済基盤づくり」が解決策であろう。玉城朋彦氏の「更新されていないホームページ」には,3年前の緊迫した情報が「保存」されてる。ぜひ検索してみていただきたい。 → http://www.rik.co.jp/tamaki/