安田純平さんイラク現地報告会(その4)
 というなかで唯一残っていたのは、「クヒーヤ」という。イラク人被っていますよね。それが目隠しにされて残っていました。で、自分で持っていまして、初めてイラクへ来た1昨年向こうで買いました。頭に巻く方法なども教わりました。
 マフラーにも使えるし、寒ければ、羽織ればいいし凄く便利なのですね。また自分のが残ったのですね。いろんな使い道があるなかで唯一出来なかったのが、覆面です。
 ニュースなんかで「武装勢力」といわれている連中が覆面をしていますよね。
 あれ結構街中でも見かけるんですね。街中に武装勢力がいるいるのではなくて、一般人がやっているのですね。要するにマスクなんですね。埃っぽいので土木する人は普通にやっています。
 でぴっちり巻いて、結構しっかりしているのですね。なんとかあれを覚えたい。イラクへ行っているなかで鏡を見ながら練習したのですが、出来なかったのですね。それがちょうど目の前にそういう連中がいるんですね。これちょうどいいのだということで、「本場の覆面を教えて欲しい」と言いましたら喜ばれました。

 教えてくれました。時間が押してますので急いでやりますね。

(安田純平さんはイラク流の覆面を壇上で披露してくれました)


 えー、結構大きな正方形になっていまして、半分の3角形にするのが一応基本です。
 で、これを被りまして、一方をぐるっと巻くと、これを両方巻くとアラブ人風になります。こんな感じになります。、これを前に巻けばいいので。
 結構簡単に、武装勢力みたいになってしまいます。(会場 笑)

 結構しっかりしていまして、まあ本当にマスクとして良いので、年末の大掃除などではかなり良いかなというのと(会場笑い)、寒い日に自転車なんかに乗る日は(会場 笑)、
耳なんかも暖かいのでいいんじゃないかなと思います。
 視界は広いですから全部見えますからね。是非お奨めなんですけれど。

 

 普通は農民なんで連中は、負い目みたいなものを持っていますね。そういうなかで、「わしらに捕まった日本人が、わしらの真似をする」と言うわけで凄く受けました。
 地域公認なので、近所から一杯お客さんが来るわけですよ。親父がやれと言うので、毎回やらされました。そうすると「そうではない」と違う方法を教えてくれまして、2種類マスターしました。

 

 連中笑ったんです。笑ったので何とかなるのかなと思ったわけです。笑いあう関係というのは情が沸いて来るのです。情が沸いて来ますと、こいつはいいかな。という気分になります。笑わせるのと言うのはとても大事です。
音声が聞けます
 連中は普通の農民だったんですよ。武装勢力と表現されていますが、そこに住んでいるおじさん、おばさんがやっえいるわけですよ。おじさんが、まあ向こうは皆銃を持っていますから、銃を持って自警団を出したと言うわけで、勢力も何もないわけですね。

 そこの住民ですから。農民なのですごく明るい皆さんが多くて、良く笑いました。彼らも。こちらのほうが和ましてもらった部分がありました。それで笑いあう関係になりますと落ち着いて来まして、連中の方の様子を観察するんです。

 長方形の部屋にいまして、一番奥に座らされていまして、だいたいこの部屋、こんなに大きくなくて、この4分の1くらいの部屋です。右が壁の一番向こうに、出入り口がありまして、連中は両側の壁沿いに並んで座るわけですね。

 で手前が偉い人になっていまして、偉い順です。前から両側、年齢順とか家の格で決まっているようです。日本なんかでもそうですね。お客さんが来ると偉い人が来ますと、立って迎えまして、半分ぐらい立つ。全員と握手すると。アラブなんかではだいたいそういうルールになっていまして、出入り口の前と言うのは末席、下っ端ですね。
 
 そこに、小学生前後の息子、彼はハイラルと言うのですが、お客さんが来ますとお茶を持って来るために走らされています。水を持ってこい。水道がないので、田舎なので外から持ってきます。
 かれが石鹸にタオルを持って来まして、洗わしてくれる。本当にめんどくさそうにしていまして、いわゆるぱしりですよね、使い走り状態ですし。
 その子もお客さんが来て握手する時は参加できるのです。偉そうに握手していまして、嬉しそうなんですよ。かれも大人扱いされているのですね。イラクと言うのは事実上、行政や政府が機能していないので、彼らの社会の秩序を保っているのはそういった地域のルールですよね。部族のルールですよね。
 一定の年齢になると大人社会に入って行って、最初は地域のルールを勉強するわけですよね。そういうものを小さいうちから仕込んでいくのですね。田舎は凄く面白いのですね。

 首都のバクダッドなんかは人口が500万人もいますので、地方から一杯集まっていまして、両親と子供だけという家も多いです。地域全部が家族みたいなところはすごく面白いですね。

 それ夕方はイスラム教のお祈りが始まりまして、みな整列して聖地メッカに向かって聖典を読むと。夕方なんですよ。電気がつかないので、ランプなんですよ。このコーランがコーラスのように響いてきまして、美しかったです。神秘的というか。

 あの光景を撮影したかったですね。本当は出したいのですが、ないので、直に見に行っていただきたいなと思います。農村でしたので、歓迎されまして、飯は山盛りですし、でチキンがのっています。キューリやトマトもありました。朝は牛も飼っていますので、ヨーグルトもありました。

 本当に落ち着いたら、農村体験、「ファームスティ」というのですね是非日本人を迎えてビジネスをしたらどうかと言っときましたので(会場笑い)、是非いかがかなと思います。

 整列しているのですが、3歳の息子も参加する、させられるのですね。イスラム教というのは、立ってお辞儀をする。繰り返すと。彼も一応真似するんでする。みんながお辞儀をしても遅れてしまう。見ていますと3歳なので、やっぱりお祈りはしていますが、飽きちゃうんですね。遊びはじめる。そうすると兄のハイラルがいまして、つついて注意をする。また参加します。

 農村で生活していまして、農場の作物を食べて、毎日神に感謝するという生活を一緒に物心ついてから繰り返すわけですね。そういうなかで彼らの信仰心が身について行くんだなと。いわゆる彼らの倫理観、道徳観、死生観が地域全体でこうやってつくられていくんだなと見えまして。 

 やっぱり田舎のほうが、信仰心が強いですよね。神に感謝すると言うのも実感があるんでしょうし。そんな調子なのは前半部分でして、後半は2日の晩から別のグループにひき渡されました。それが雰囲気が違うんですね。

 翌朝又行きたいといいましたら、「ほうかむりをしろ」と言われました。周りを絶対見るなと。要するに地域のなかで秘密になったんですよ。どうしてかというと彼らは米軍を襲っていまして、米軍はそういう連中に空爆なんかをしています。私らが見つかると彼らも見つかる。

 でどうして地域のなかで秘密かと言いますと、米軍は現金をばらまいていまして、密告しろと、だれが地域のなかでテロリストが密告すれば金をやると。言われているそうです。
地域のなかでも米軍を襲うメンバーは誰かは秘密なんです。

 だから連中は農民なんです。地域公認でやっている前半と、米軍を襲うグループは別グループになっていて、前半は白昼どうどうとやっていまして、後半部分は存在は知られていて私達を引き渡すという一方で、メンバーは地域のなかでも秘密であるという二重構造ですね。

 そういうグループなんですが、アメリカの密告制度は、現金欲しさのうその密告も沢山あります。あいつはそうだと言うと、米軍が入ってきて捕まえる。その人だけでなく親兄弟も皆捕まえるのですね。本人がいなければ奥さん捕まえるとか。身代わりですよね。

 そういうわけで嘘ばっかりなんですよ。嘘ばっかりなのに、皆捕まるので、イラク中で数千とか1万人と言われている人たちの中で、米軍襲撃に関係している人は1割もいないだろうとんもことです。9割は関係ない人間であると赤十字が報告書を書いています。
 と言うわけでめちゃくちゃなんですよ。憎まれるのも仕様がないと思います。そういうグループなんですけれど。
 部屋のなかは長机があって、長椅子があって黒板があると。5〜6人のイラク人が銃を見張っていました。中には覆面なんかもしている。ひじょうに緊張している。
 要するに「お前はスパイだ。CIAだと」言うのですね。妙な動きをしたら撃ち殺すと言っていました。本当に撃つ様な雰囲気がありました。彼らは,カラシニコフという銃を持っていまして、横に安全装置がついていて、外れていました。目の前でがしゃと弾を入れる。

 学校とうのは生活の場ではないし、児童生徒がいなければ密室ですね。で密室の教室で拷問。場合によっては校庭で銃殺処刑とか。あるかなと思いまして、学校はまずいかなと思うわけです。

 彼らはどうしてこれほどアメリカを憎むか判るか。俺は以前、村を歩いていて、やってきた米軍に問答無用で捕まえられて、1ヶ月間どっかの刑務所に放り込まれて、毎日殴られ蹴られた。ある日別の部屋に呼ばれていくと、すべて脱がされた。それ以上何をされたかは想像しろ。と。あれで俺の人生が終わったんだ。後は奴らに復讐するのだと。

 お前が同じ目に遭ったらどうすると聞かれました。もう反論も出来ないのですね。要するに彼らは拷問、虐待の経験があるのです。だからその自分自身の体に恨みがあって抵抗ている部分と、地域全体が包囲されて攻撃されている部分で、自分らの生活を守ると言う部分があったのですね。

 拷問のニュースが流れる前でしたかね。私らが捕まったのは。米軍への感情がぶつけるわけです。すごく実感するわけですね。自分はそうしたアメリカの占領に抵抗しているのだ。日本は広島、長崎の経験をしているのにもかかわらず、なぜアメリカの戦争を支持するのかと言うのですね。
 イラクへ行きますと小さな子供でも、広島、長崎を知っています。反米教育なんですね。アメリカはそういう国なんだと教えられています。この一瞬で何万か何10万が死んだということは知っているんです。
 日本は昔アメリカと戦争をして、そういう被害にあって、そこから復興したというので尊敬なんかもあるんですよね。そういうに日本は思われています。それは戦争が始まる前から何回も言われています。
 今回はまあ捕まっているので、なんとか釈明しなけれいけません。「日本も約60年前の戦争で占領されて、日本中に米軍基地が残っていて、今でもアメリカに追随する状態が続いているのだ。事実上占領に近い状態だと」あえて言うわけです。
 彼らが英語を喋ったので、オキュパイト(占領)されていると言う表現をしたので、こちらもそうだと。会話の中で、相手の使う単語をこちらも使うと、通じやすいでね。
 共感されやすいので、あえて相手の使う表現を選びながら、会話するわけです。

 だから日本でも占領状態から自立をしなければならない。と考える人は大勢いるし、すべてのの日本人が戦争を支持しているのではないのだと。だからお前らは銃で占領に抵抗するのだろうけれども、俺はカメラで占領に抵抗するのだと。
 だから返せという話しをしましたが返してくれませんでした。結構な損害でした。

 実は海外旅行保険がききまままして、降りるんですね。海外旅行保険は規約を見ますと、一応戦争とか内戦とか、紛争地域では適用外なのです。イラクは自衛隊が行っていますので、非戦闘地域なのですね。(会場爆笑)

 そういうわけで旅行保険がきいちゃうわけなんですよ。私も一度申請しましたら、相手が保険会社ほうで、「イラクは戦争しているので、適応外である」といってきました。面白いですね。日本政府は戦争ではないと言っているのに。保険会社は厳密にリスクの判断をするわけですよね。

 リスクの判断をする保険会社が「戦争」というのには面白いので、どういう判断で戦争なのかと質問状を送りましたら、すみませでしたと「非戦闘地域でした」(会場 笑)で、適用になりました。

 すごく皮肉な話しです。それが三井住友海上という日本に保険会社です。で聞きましたら昨日橋田さんの奥さんが来ていらしたとか。お話されたかもしれませんが、橋田さんはAIUというアメリカの保険会社に入っていたそうです。

 前の3人も入っていたらしいです。適用になったらしいです。安いですからね。今回は「適用外」と言って来たらしいです。橋田さんは今裁判をやっているらしですね。
 AIUはアメリカの会社です。保険会社は「戦争だ」と言っています。だけでも「日本政府は違いと言っている」ということで裁判になっています。

 どうなるのでしょう。裁判所が、保険会社の勝ちにした場合、「戦争しています」ということになります。おそらく「非戦闘地域」というのではないでしょうか。
 どうなるでしょうかね。自衛隊を送るための法律であって、常識的に考えたら戦争ではないのでしょうか。そうなるとどうなるのでしょうか。是非注目していただいたい。

 すべての日本人が支持しているのではないのに、日本政府はなぜ(アメリカを)支持するのかと連中はいうわけですね。いや日本は選挙があり、4年に一度選挙があり、もっとも多い議席を持っているのは政府与党であると。もともとすべての人間が支持しているのではないというと、半分以上が支持しているので、今度は捕まっている私がまずいのですね。

 そうではない。選挙をするのは半分ぐらいだ。半分しか投票しない。(会場 爆笑)だから半分ぐらいしか投票しないうちの過半数が支持しているのが日本政府だ。全体を見ると殆どいない。だから俺は違うのだと言いました。

 そうすると彼らは、なんで投票しないのだ。と。(会場 笑)。なんでと言われても困るんですが、自衛隊の送る前の選挙でして、投票率が6割ぐらい。関心が低いと言わざるを得ません。

 まあメディアの影響とか、教育の影響とか、後投票率を低く抑えたい政党の影響とか、いろんな影響があります。低い、関心が下がってしまう。
 デモクラッシーというのは一部の人間の意見で動くものだ。これであると。市民の意見で運営するのになぜ市民をこ殺すのかと。何度も向こうで言われました。


 要するに結果は変らないんですよ。一党独裁バース党政権と、結果は変らないのですよ。
民主主義は過程が大事だと言われていますが、結果も大事です。そうなると何が違うという話しになります。民主化すると言うのに「なんで殺すのか」ということになりますね。
 民主主義というのは、まず参加することが大事です。何ですか民主主義自体の問題はあるのにしても、大前提をちゃんとあるわけで、関心がないという日本社会の問題点があるわけです。

 そんなわけで連中結構英語を喋ったんですね。まあイラクは小中高と無料なんですね。家が飯を食っていけるのなら皆学校へ行っています。小学校から英語をやるので、高校では喋れるのですね。街中でも貧しい家の場合は、靴磨きとか、煙草売りとか仕事をする。

 そこそこ飯の食える農家で、町も近いようなので一応学校へ行ったのかなと思いますね。
まあその調子で喋りました。夜になりました。どうなったかなと審査の結果がでないようです。若いのが来まして、「今でも何人かはスパイだと言い張る」。どこかで大勢で審査をしていて何人かはやつはスパイだから撃ち殺せと言われているわけです。

 おかしいなと。目の前のいる若い連中は下っ端なんですね。下っ端の連中を懐柔してもどうしようもないですね。そうすると若いものが来て「お前ところで空手はやるのか」という訳ですね。

 イラク人は空手が好きなんですね。街を歩いていても「ジャッキー・チェン」とか「ブルースリー」とか言って寄ってきます。香港だというと「本当か」と言ってショックを受けていました。

 まあ会話で和ませようと言っているのだなと思いました。昔私は少林寺拳法をやっていまして、多度津にある怪しい本部へも行きましたけれど。めんどうなので空手をやるぞと言いましたら、「やはりお前はデンジャラス(危険な)奴だ」ということになりました。
 スパイ容疑はそれかという話しですね。それは違うあれは香港だ、俺は日本人だと一生懸命していましたら、年配の人が来まして、明日解放と決定したと言われました。この若い連中もびっくりしていまして。解放の経緯はわかりません。
 翌朝本当にバクダッドのモスクへ行きますと日本政府の大使館員が来まして、「心配しました」と犯行声明など一切なかったのでどこの交渉のボタンをどう押していいかがわからなかったと。
 だから通常のネットワークを使って情報提供を求めて、日本政府のスタンスを伝えました。と。要するに通常の業務の範囲でやってましたと。なんかしたわけではないですね。
その5へ続きます