留学生活で得られるものは?
 
 今週のゲストは高知大学大学院生(英語教育専修修士課程)の野村美穂さんです。今日のテーマは「留学生活で得られるものは?」でお話をお聞きします。
 野村さんは英国に留学されていました。 どのような方法で留学されたのでしょうか?
 

確か自分でブリティシュカウンシルと言う公的な国際文化交流機関を見つけ 直接問い合わせたことを覚えています。留学先の学校以外のこと、例えば、往復の航空券のチケットの手配、ホテルの予約などは自分でしました。


 留学は国内にいるうちから始まっています。円とポンドの交換為替レートにも関心が出てきます。新聞などで円が一番強い時期に、高知市内にある銀行の本店にて、トラベラーズチェックに換金したりしていました。

野村美穂さん
 
 留学されたイギリスの オックスフォード大学ハードフォードカレッジですが、どのような雰囲気の学校だったのでしょうか?
   私の場合は、ハートフォードカレッジで行われているサマーコースに参加していました。サマーコースは夏の間約3ヶ月間行われていました。ハートフォードカレッジといえば、校舎の一部にある「ため息の橋」で有名です。
まず、コースの初日目はクラス分けテストでした。このテストの判定で初級から上級のレベルごとに分けられます。だいたいクラスの構成としては、一クラス7人から多くて10人でした。少人数で学生同士すぐ親しくなり、わたしには理想のクラスでした
 学生はフランス人、イタリア人、スペイン人などヨーロッパの人がメインで、アジアの方では、私たち日本人、中国人、韓国人がいましたが、そんなには多く見かけませんでした。
私のクラスには、ヨーロッパの人ばかりで唯一わたしが日本人だったので、どうにかして英語でうまく自分の言いたいことを伝えないといけないと思い、必死だったことを覚えています。しかし私にとっては、自ら問題や困難に立ち向かうことは楽しいものでもありました。そういった意味でも自己解決能力がついたのも留学のおかげだったと思います。
 レベル分けテストで、中・上級クラスに入ることができると英国文化や、時事問題・シェイクスピアの劇など英語を通して他の学習ができます。
授業のプログラムは、私のいた中上級のコースでは、午前中は教室の中で学習をしました。午後は街へ出て行き、実際に英語を使います。
オックスフォード大学ハートフォードカレッジ
学生食堂の様子です
 またわたしの大好きなひとときでしたが、授業が終わりますと、1時間目と2時間目の間の20分のティータイムです。学生食堂に行きますと、コーヒーや紅茶や学生達が食べているチョコレートのバーもあります。殆どの学生が学生食堂に集まりますので、お茶を飲みながらお喋りも出来ます。
 その学生食堂の様子ですが、映画「ハリーポッター」に出てくる学生食堂にとてもよく似ていました。
 サマーコースですが、授業ごとに先生が替わり、さまざまな先生に出会えました。ある先生は、そのときにイギリスではやっていた音楽を先生が持ってきて、歌詞を生徒に配り、音楽を聴かせながらその歌詞の意味を生徒自身で理解させ、感想をみんなの前で発表させたりします。またある先生は友達とペアになって演劇をするなど。自己表現を豊かにするねらいがあったと思います。
私はイタリア人の男の子と2人で自分たちでストーリーを考え、他の生徒の前で演じるように先生に言われたのですが、言葉に感情を込め、オーディエンスに対して日本語以外の言葉で自己表現をする難しさを覚えました。

 人に伝える楽しさの両方を知りました。またある時間ではある共通のテーマを用いてそれぞれの生徒が3分間ずつ、簡単なプレゼンテーションをします。国が変われば考え方もがらりと違うことがよくわかりました。しかしそれと同時に自分の考え方や育った環境、自分自身がどのような人なのかということがなんとなくみえてきたりもしました。


 午後からの実践的な授業では先生から買い物リストを渡され、街へ出て実際に買い物に出かけることもありました。高知の日曜市のような市へ行きました。しかしただ買い物にいくだけではなく、お店の人達にたくさん接するようにしなければいけないようにしむけられたように思います。たまに店員さんもわからないリストもあり、一緒に悩んでいたりしました。それもまた交流の一部であったのです。英語を多用する機会であったと思います。

留学先での授業の様子です。
   それ以外には博物館や美術館にも出かけました。イギリスの博物館や美術館は殆どが無料。料金をとるところも格安です。野外学習が気軽に楽しめました。

 夜には、毎日のようにイベントがありました。映画の上映会や、大学の地下室でのクラブイベント、また、大学の中に学生のPUBもありましたので大人の学生はそこでお酒を楽しんでいました。私たちでもソフトドリンクは飲めますので交流をするにはとても良い場所でした。

ロンドンにある大英博物館。イギリスでは博物館などの公共施設は殆ど無料だそうです。
 高校生時代と大学生時代はどちらで留学したほうが良いと思いますか? 個人差はあると思いますが、留学は年齢的には何歳頃行かれたらいいのでしょうか?具体的にはどういう条件を満たした時に行かれるのでしょうか?
  私の意見としてどの時代に行くことがふさわしいということや留学期間は、特にあまり関係ないと思います。行きたいと思うときが行きどきだと思います。
 そして、自分がその留学によって一つでも学んだことがあれば、それは意味のある留学ではないかと思います。私がとった方法は、高校生の夏休みたびに約1ヶ月に限定で留学しました。1ヶ月というと何の役にも立たないと思われるかもしれませんが、逆に時間を無駄にしたくないと考えで積極的に活動できたと私は思います。
 留学は寮のようなところへ入ったほうが良いのでしょうか?それともホームスティのほうが良いのでしょうか?
   私の学校はホームステイと寮が選べたのですが、少しでも英語を多く話す時間を作りたいと思い、ホームステイにしてホストファミリーと常に話していたように思います。私のステイした家は、男の子3人兄弟で近所の子どもも男の子ばかりで、クリケットという野球みたいなスポーツをしたり、公園を駆け回ったりと毎日、夜英国は日暮れが遅いので、午後8時頃まで遊んでいました。
 また、週末たびに一人でリュックを背負い、旅行しました。汽車の中では同じような旅行者と友達になり、手紙のやり取りもしました。行った先々では日本人だからと珍しがられ、老夫婦からはお茶をごちそうになったりと。その時に一人で生きてきたと思っていたのに、実はみんなに支えられて生きてきたのかもしれないと実感できました。
 また、1ヶ月限定滞在だから、いろいろ楽しまないと損だというそういう貪欲な気持ちが、どんどん積極的に人と接する機会を作ってくれたような気がします。
野村美穂さんとホストファミリーの人たちです
ホストファミリーの自宅の様子です。

 留学といえば、費用が問題です。相手先の国、方法によっても違うものであると思いますが、そのあたりはどうなのでしょうか?

 ヨーロッパの方はアメリカなどよりも物価が高く感じますので、留学費用も少し高めになると思いました。私は倹約家なので、おまかせコースではなく、自分でやれることは自分で手続きなどを自分でしました。ですのでかなり節約したと思います。


 例えば自分で銀行へ行きました。当日の為替レートなども参考にしながら、とトラベラーズチェックに換金しました。自分で調べしたようが有利な条件で換金ができます。そういうことを調べることにより、言語学習以外の学習が出来たりします。 航空券のチケット購入も自分で手配すれば、旅行会社の手続き料も省くことが出来ます。航空会社に連絡し格安で購入できます。今であればインターネットなどでの購入も可能ですし。

 

 留学に関する情報もありますが、野村さんがお薦めする方法はどのようなものでしょうか?
   それぞれの留学の目的にもよると思いますが。私の場合はオーラルコミュニケーション力の向上と異文化体験それから、自分の能力ためしみたいなこともありましたので、そういう体験を希望の方なら、私のようにあえて日本人がいない学校を希望すること、また手続きの段階からできる限りのことは自分の力でやっていくことだと思います。自慢ではないですが、私は面倒くさいことが嫌いな人でした。時間にながされて、軽くもうどうでもいいと思ってしまったこともありました。
 そのようなとき、両親が留学を勧めてくれて、はじめは不安ばかりつきまとっていましたが、面倒くさい手続きを自分で調べ勧めていくうちに、なんとなく私でもやればできるのではないかと、自分から前に踏み出す勇気と自信がついてきたように思います。そして少しの成功を重ねていくことが、私にとっては、一人で何でもでき、どこでもいけるのだという自信となりました。私が勝手に作った考え方なのですが、例えば、突然10キロメートル先のゴールにたどり着きなさいと言われると、果てしなく遠くに感じて最後までたどり着けるのか不安になってしまいます。
  細かい間隔で立っている電柱のように、目標の到達点を細かく分けていくと、成功のハードルもそんなに高くないように感じ、少し頑張れば次の電柱つまり、小さなゴールに到達することができるということがわかってくるので、心理的に楽なような気がます。そして、だいたいの事が自然にゴールにたどり着いていました。だれでも、知らない世界へ出て行くことは怖いし、自信はないと思います。
 またなかなか自分の身に何かが降りかからないと重い腰を上げようとはしにくいと思います。だから、英語にしても、英語を習得したいけれど、なかなか自分では思うような成果が得られないと思うのならば、あえて自ら誰にも助けてもらえない場所に、自分自身を放り出してしまうことも良いかもしれません。そして、実際に、楽しい体験や、怖い体験などを身をもって感じるのもいいものです。
実際にイギリスの町で夜歩いていると、すこし危ない目に遭ったこともありました。しかし、そこでできる限りの英語を使い自分の力でその場から逃げることができました。すごく怖くて泣き崩れました。でも、なぜか必死で抵抗するために使った自分自身の精一杯の下手な英語がおかしくて泣きながら笑えてしまいました。そして、自己満足かもしれませんが、私にも英語は使えるんだという自信にも少しはなったと思います。
 ホームステイ先に帰って、その話をするとホストファミリーには、かなり心配されましたが。
 このように、せっかく留学をするのなら言語を学ぶ目的だけではなく、できる限り自分できることは自分でやってみたり、また自分の能力というものを一度信じてみて、積極的に留学先で行動することは、その留学自体を楽しくする方法かもしれないと思います。
 イギリス滞在中の野村美穂さん。
*イギリス滞在中の写真は野村美穂さんに提供いただきました。