災害体験を高知でどう生かす その2
 今週のゲストは(有)夢千年の暮らし PRODUCE&DESIGN代表であり、日本民家再生リサイクル協会の黒田武儀さんと、地元高知でNPO法人「我が家を見直す会」事務局長の西田政雄さんです。
 2人は3月19日、ソーレで開催される「震災からの復興〜今 そしてこれから」の実行委員会を担われています。今日のテーマは「災害体験を高知でどう生かす その2」でお話を伺います。
 まず西田さんに伺いしますが、第2部のパネラーになられる下川口の手島さんところへもお尋ねされたそうですが、そのあたりのお話をお聞きしたいのですが・・・。

西田 県外からのゲストの皆さんにひととおりご挨拶をしました。地元の手島さんにはお会いしていませんでしたので、宿毛市に用事がありました折に、お訪ねいたしました。


 非常に興味深い話を熱心になさっている方でした。こういうリーダーがいれば、本当に助かるのになと思いました。
 前の西南豪雨の時の下川口では死者が1人もいませんでした。これも手島さんのご指導や、小さな地域ですから、誰がどこで寝ているかもという細かい情報交換が出来る地域です。

西田政雄さん
 そのあたりのネットワークが形成されているのですね。土佐清水市の下川口(しもかわぐち)地区はどれくらいの世帯で、人口なのでしょうか?
西田 そうですね。この間うかがいましたら、100数十世帯で、人口では300人ちょっとと聞いています。
 ただ高齢化がひじょうに進んでいます。また海に近いので(太平洋に面しています)ので、地震で揺れたら20分かからないうちに津波が来ます。手島さんを中心にして皆さんで、豪雨で死者を出していないのですから、津波でも出してはいけないということで地域ぐるみで取り組まれています。
 避難をする高台のお宮の下に石の階段があります。そこへ6分で地域の人を全員集めます。そして順次上へ上げます。足の悪い人もいますので、石段だけではいけないので、迂回用に新しく道をつけました。
 地域ぐるみでとにかく自分達で出来る範囲のことをしようということになりました。非常に熱心に取り組まれていました。
 下川口の手島さんをリーダーに住民の力で立ち上げているのでしょうか?

 神岡俊輔さん提供の資料。

 阪神・淡路大震災時に「生き埋めの時、だれがどのように助け、助けられたか」の調査です。

 自助、共助の必要性がよくわかります。

 
西田 そうですね。市役所もまでも距離がありますから。当然土佐清水市の市役所の防災対策の部署の方との協議もされて行っておられるとは思います。
 自分達が何が出来るかと。それから今回お訪ねしたときに手島さんから興味深い話をききました。
 前の安政か天保だかの大津波の時に亡くなられた方の人骨が近くの葉まで見つかるそうです。人だけではなく牛や馬の骨も見つかるそうです。
 浜を掘り返しますといろんなところからでてきます。相当大きな津波であったことが想定されましす。次に来る地震は昭和の南海地震の貼るかに大きいと言われているから、地域ぐるみで備えようと取り組まれていました。
 高知県全体では県民の災害に備える意識はいかがでしょうか?
西田 海に近い地区や津波がかつて被害を受けた地域では熱心にとりくまれています。また水害で罹災した地域もそうです。しかし街中ではあまり関心がないようですね。
 それにあまり知られていませんが、高知では固い岩盤までくい打ちをして建設されいる建物は数が少ないです。十数棟しかないのが現実です。高知市は50メートル以上杭を打ち込まないといけない土地です。
高知県の津波による浸水予想市街地。赤い部分がそうです。
右は堤防と、水門が完全に機能した場合の浸水予想市街地
黒田 新潟中越地震は、「局地的な地震」でした。東京からも近いし、救援しやすい地域ではあります。阪神・淡路大震災も局地でした。
 東南海地震と言うことになりますと、静岡、愛知、紀伊半島、四国が被害地域になり、広範囲になりますね。
黒田 レベルが違いますね。プレートのずれで起こる地震ですね。その時に、ひじょうに広域なります。そうなりますと主要幹線交通路がずたずたになります。そのずたずたの端っこが高知ですね。
 ずたずたの中を通らないとその地域へいけないところの問題は大変大きな問題になっています。誰もそれを語られません。
 今地震対策で語られているのは大都市部の問題ばかりです。東京だ名古屋だ静岡の問題ばかりです。高知や和歌山や三重のことなど語られていません。被害にあってもニュースにもなりませんね。
黒田武儀さん
西田 スマトラ地震と津波でも有名な観光地などは報道されましたが、名も無い島が一つ消滅しても誰知りませんでした。そんな状況になりかねませんね。

黒田 テレビなどよりもインターネットの情報が早いですね。
 そうですね。yahooのほうがはやいですね。
黒田 高知などは2ないし3週間独自に頑張って耐えなければならないと思いますね。
 都市づくりのなかで、都市景観整備事業では「電柱の地中化」工事、共同埋設管工事、CAB工事などがされています。景観上見苦しい電線などを地面に埋めてまちづくりをしようという事業が全国各地で実施されています。
 自身の場合は道路の下のインフラ設備はどうであったのでしょうか?
黒田 今回中越地震でそういう現場にいつも出会いました。
 地中埋設していない街。電柱が街中に立っているようなところは、確かに気持ちの良い風景ではありません。被害の酷かった新潟県川口町では電柱がいたるところで折れていました。
 ところが復旧は経った1日でした。折れた電柱の脇に仮設で電柱を立て電気を通しましたから。川口町が普通に暮らしていますのもLPGですからね。
 都市ガスではないです。ボンベがあり、火があれば使えます。地震の時はボンベが自動で止まりますので、火事が一軒もありませんでした。
 それからもう少し山へ入りますと、どの村も下水道整備をしています。水洗トイレになり、ウォッシュレットが使えるよ皆さん喜んでいました。ところがなんと最後まで復旧が遅れたのが下水道です。
 トイレが一番困りました。神戸の時はなにもかにもトイレも含め困り案下が、今回の新潟中越地震はトイレが最後までネックでした。女性達が困りました。
普通に電柱がある高知市風景(知寄町2丁目付近) 電柱が撤去され、地下に埋設されたはりまや橋付近
 道路の下に埋設されているもの。水道管、ガス管、下水道管など「見えない」ものの復興が大変であったということですね。
 都市づくりの教訓ですね。

黒田 都市づくりは日常的なまちづくりに関わりますね。もうひとつ美観とかもです。便利とかいう「キーワード」できるのではなくてその結果、罹災した場合の復旧であるとか、ひとつ都市の中では配慮がいるのではないかと思いました。

 (茶色のBOXが電柱代わりになぅています。多くは共同埋設管方式になっていまして、電気、電話線、ガス、水道、などが埋設されっているようです。しかし地震の場合の復旧は困難を極めるとの事です。)      

      高知市本町付近