家具職人の世界とは?
 
 今週のゲストは家具職人の黄瀬隆行さんです。黄瀬さんは注文家具を主体に仕事をされています。今日のテーマは「家具職人の世界とは?」でお話をお聞きします。
 私には想像の出来ない世界です。どのような世界なのでしょうか?
黄瀬さんは、いつ頃から家具職人になろうと思われたのでしょうか?
 10年ほど前にオーストラリアに一年間ワーキングホリデービザを使って滞在していたのですが、その時にいろんなジャンルの職業の人と知り合う機会がありまして、その中の一人の建築家の方の影響ですね。彼は自宅のリフォームから家具作りまでなんでもこなしていました。
 それを見て、なんか自分でもできるんじゃないやろか?と思ったのが始まりでした。
黄瀬隆行さん
 またその技術はどのような方法で取得されたのでしょうか?
 基本的な道具の使い方などは職業訓練校で学びました。その後様々なところへ弟子入りを志願 しますが、不況の中で即戦力が見込めない新人が働く場所を見つけることができませんでしたので、地元の 家具製造業(フラッシュ家具)に入り、手作りとは正反対の量産家具を作っていました。そこからでもなにか学ぶことがあるかな?と。 所謂無垢の木を使った家具作りは独学で学びました。

職業訓練校で家具製作技術を学んでいる黄瀬隆行さん。基本的な道具の使い方を学んだと言われました。

(写真は黄瀬隆行さん提供)

 現在日本で家具職人と言われているひとはおおよそ何人ぐらいいるのでしょうか?四国では徳島県などが多くいるのでしょうか?飛騨地方とか、北海道などに多くいるのでしょうか?
 そうですね。まず、職人さんの数ですがそういう統計は見たこと無いのでわかりません。平成12年度の国勢調査では家具製造業に従事する人の数としては14万人とあります。、すべての人が職人かは疑問が残る数字ですね。
 僕のような個人で家具作りをしている者は統計に入っているのでしょうか?随分前になにかの資料で家具製造業がおおよそ300件というのを見たことがありますが、ここ数年、規模の小さな工房は増えているような気がします。

 また、四国内でしたら家具の地場産業として有名なのは、香川と徳島です。
 家具を製作される時に、何が難しいのでしょうか?木材の選択。施主の意向。
加工工程。組み立て。塗装などどがあるようですがいかがでしょうか?
 材料となる木ですね。木は買ってきて其のまま使えるというものでは有りません。製材されて水分(含水率)を抜いて、大体10%以下の含水率になってはじめて使える、用材としての「木」となります。その工程でもねじれや、反りなどもあります。
 大体、「一寸(木の厚み)一年」と言われています。乾く工程で反ったり、割れたりしながらその製材された板のの状態で落ち着こうとするんですね。
で、使える状態になり、そこから表面を削ったりして目的の寸法に加工するのですが、そこでまた反りなどが出てきます。
 

それをうまく見極めて最終的な部材となります。でもそのままでは落ち着いてはくれないので(笑)将来的に故障の原因にならないように加工工程で工夫します。木は特にに板目(年輪が表面に現れている板をいいます)の幅で室内の温度、湿度に反応して100/3ミリの幅で動きます。それを常に考えながら加工しなくてはいけませんね。


 伝統的なホゾ加工というのがあります。ホゾといって部材と部材の接合なども一工夫が必要ですし、その接合精度も0.1mm単位です。組み立ても無理のない組みかたを考えなければいけません。接着剤を塗布してからクランプするまでの時間はなるべく短時間にしなければ最大の接着力がえられないし、失敗が許されません。そういうのをすべて加味してなおかつ意匠、デザインを考えた上でお客さんの希望にそう形にしていかなくてはいけません。


 割れてしまうようなところを無理やりネジで止めるとか。そういうことはしません。そこまで考えた上で、施主さんや注文主さんのオーダーされる形を考えなければいけないと思いますね。

 アリ溝と言われています(写真は黄瀬隆行さん提供)
 最近「シックハウス症候群」なども注目されています。建材とともに家具にも
原因があるのではとも言われています。そういうことはあるのでしょうか?
 合板を主体とした家具はどうしても接着剤が多用されていますので、その原因となるホルムアルデヒドの放出量は多いとは思います。
 ただ、最近は改善の傾向にはあると思います。無垢の木でも接着剤は使うのでjis4星の一番安全性の高いものを使用するようにしています。
 私はあまり合板は使いません。無垢の木が主体ですし。それでも接着剤はどうしても使用します。その場合はJISの「フォースター」規格を使うようにしています。
 星のマークが4つあるフォースターであれば使いますということですね。
 黄瀬さんと同様に注文家具をされている技術者仲間は沢山おられるのでしょうか?なにかサークルか組合のような集まりはあるのでしょうか?
 全国には、飛騨地方や北海道などでは沢山いると思いますが、僕自身はサークル等には入っていません。ただインターネット上で知り合った方々とは個別の付き合いというのはあります。
 黄瀬さんの家具はどちらで購入されるのでしょうか?
また注文家具を発注する場合の注意点などございましたらよろしくお願いします。
 すべて受注生産ですので、在庫はないです。(一部市内の雑貨屋さん「ガンボ・フォーククラフト」さんに商品見本としておかしていただいてます。)
 注文はメール、FAXなどでお話をお伺いいたしております。また可能なら直接お会いしてお話させていたたきます。
 
 どういうタイプの家具の注文が多いのでしょうか?
 それは様々ですね。例えばテーブル一つにしましても、既製品の家具の大きさが合わない。家族の人数との関係とか。高さとか。
 この間のご注文をいただい家具は、酒屋さんでした。お酒をラッピングする場合の包装紙を折らずに引き出しに収納しまして、包む作業は立て仕事でしたい。高さを少し高めにしたいという要望がありました。その要望に応える注文家具を製作しまして、納入いたしました。
 FLAT FURNITUREオリジナル゛積み木゛。一歳になるお孫さんのプレゼントということで積み木を製作させていただいた。様々な形を様々な木で作るのは悩みつつも楽しく作りました。普段の家具作り以上に角という角を丸める作業は大変でしたが、赤ちゃんが触っても優しく木の感触を感じてもらえればとひたすら52ピースからなる部材を手で確かめながらサンドペーパーで
磨きました。


本体寸法/W345×D310×H100
箱主材/ホワイトアッシュ
積み木材/メープル ウォールナット ナラ ホワイトアッシュ アルダー
無塗装 無着色
\30.000

 黄瀬隆行さんのホームページより

 家具と言う要素とともに、建築的な要素もありますね。そのお話では。
お客さまの要望を聞きながら打ち合わせをするのですね。
 お客さまの要望をいかに引き出すか。そういうこともしなければいけませんね。
 そのあたりが難しいところですね。
 どこまでその要求をお客様から引き出さすことができるのかが、こちらに求められていると思います。
 無垢の木の家具を注文するという前提でお話しますと、
注意点としては特に色と傷に関してトラブルの原因になりやすいと考えています。
例えば、こんな感じの色合いにしてほしいとの注文があり、製作前に着色したサンプルを作ったとしても完成した製品と比べると印象が違うことがあります。光の加減や木の表面の塗料の吸い込み加減などで印象が変わる事があります。
よく相談の上納得していただくことが必要です。
 傷に関してですが、一番相談されるのがテーブルの表面のことです。傷がつかないという仕上げは木製の天板では正直ないです。
(他の素材でもあるとは思いませんが)傷つきにくい仕上げでしたらウレタン塗装という仕上げ方があります。表面を硬い膜で覆ってしまう塗装ですが、よごれやしみなどには強いと言えるでしょう。ただし木の肌触りや味わいは失われます。
 木の肌触りや味わいを求めるのでしたらオイルフィニッシュという仕上げがありますが、表面に塗膜を作らないので傷はつき易いといえます。
どちらを重視されるか、良くお考えいただきたいですね。

 またルールですが、製作開始してからのサイズ変更はきかないと考えてほしいです。例えばテーブルの長さを1m50から1m60にしてほしいといわれましても、木を切った後でしたら後の祭りとなります。

 黄瀬隆行さんは若い注文家具の職人ですが、いろんな経験をされています。写真を提供いただきました。
誕生まもない黄瀬隆行さん
インド旅行中です。
オートバイ競技に熱中されていた時代もあったそうです。
英語学校での黄瀬隆行さん
公園で(海外旅行中)
オーストラリア エアーロック