朝鮮総連とはどういう団体なのですか?
今週のゲストは、在日本朝鮮人総聯合会高知県本部常任委員会委員長の黄英信(ファン・ヨンシン)さんです。今日のテーマは「朝鮮総連とはどういう団体なのですか?」でお話を伺います。名前はよく聞きますが、実はどういう活動をされている団体かよくわかりません。正式名称は「在日本朝鮮人総聯合会」です。
 在日本朝鮮人総聯合会は高知県本部もあります。日本各地に地方組織 もあります。会に所属している人は何人で、支部は何箇所にあるのでしょうか?
 そうですね。朝鮮総聯は東京に中央本部を置いて、全都道府県に地方本部を置いています。東京だけ、東京と、西東京の2つに分割しているので、都道府県本部が48あります。
 支部と分会は新設、統合、分割などがあるので、そのつど変動がありますが、現在全国で248支部と1014の分会があります。

 そのほか、大学校1校と、日本の小中高にあたる民族学校が初級部64校、中級部42校、高級部11校の計118校あります。商工会、青年、女性、教育、科学、医療、人権、文化スポーツなどの傘下団体が18、出版、金融、保険、貿易等22の事業体があります。

 2003年8月末現在、全国の朝鮮籍、韓国籍を有する同胞数は、統計上625,422人となっています。高知県は下から5番目に少ない県でして、794人(352戸)の同胞が居住しています。
 県内には朝鮮総聯県本部と、その下に3つの支部と5つの分会があり、傘下団体には、商工会、青年同盟、女性同盟の3つがあります。

 会員の件ですが、わたしたちは、元来朝鮮はひとつ「ONE KOREA」の考え方です。朝鮮、韓国の国籍と団体所属の違い、会費、出版物購読、各種集会参加などでそれぞれ違いはありますが、在日に至る歴史的背景や、日本での社会的処遇、民族的差別と生活環境の実態の共通性から、朝鮮総聯は、各種の権利の要求と差別撤廃、祖国統一を目指す運動などを、朝鮮籍、韓国籍に関係なく全ての全同胞を対象に行っています。あえて会員、非会員の色分けはしていません。

 在日本朝鮮人総聯合会はいつごろ結成されたのでしょうか?高知の組 織もいつごろ出来ましたか?

 在日同胞は、祖国解放、即ち1945年8月15日の日本敗戦直後に、「同胞の権利と生活を守る民族団体」と「子供達の教育のための国語教習所を組織する運動」に取り組みました。

1945年10月15日に、在日本朝鮮人連盟を結成、全国に数百箇所の「国語講習所」を開設いたしました。

黄英信さん

 ところが朝鮮戦争を直前にして、アメリカGHQ(連合国総司令部)の指令を受けた日本政府は1949年9月8日に「団体等規制令」を発令しまして、朝鮮人連盟と傘下にあった民主青年同盟を強制解散させました。(同時に組織の財産も没収。当時の金額で4000万円以上。重要幹部らは公職追放処分になりました。)


 同年10月8日には、「朝鮮人学校閉鎖令」を出し、朝鮮人学校も強制閉鎖されました。はっきり言いまして当時の日本政府に「つぶされて」しまいました。

 その後1世同胞のねばり強い再建運動により、1955年5月25日に、今の新たな同胞組織である在日本朝鮮人総聯合会が結成されました。高知県本部はそれから数年後の1958年9月8日に開かれた「朝鮮民主主義人民共和国創建10周年記念高知県同胞大会」の場で結成されました。

司会をされている黄英信さん。

(黄英信さんより写真提供いただきました。)

 在日本朝鮮人総聯合会は、主にどのような活動をされているのでしょ うか?
 その第1は「民主主義的民族教育の強化」「民族性と同胞愛に基づく豊かな同胞社会の構築」、「全ての同胞の人権、生活権を始めとする諸権利の擁護」「同胞生活に奉仕する活動です。」

 その第2は朝鮮民族最大の願いであり、課題である南北朝鮮の統一と祖国の発展,繁栄に寄与する活動です。

 第3は、朝・日両国民人民の友好親善に努め、朝・日間の国交正常化を実現して、真の善隣友好、協力関係を樹立するとともに、自主、平和、親善の理念のもとに、世界平和と国際連帯の発展に寄与する運動です。

 在日1世の先輩同胞達は、現在とは比べようのない厳しい差別と抑圧、全くの無権利状態のなかで、この「3つの重要課題」を柱に決死の思いで、挫けることなく延々と運動を継続してまいりました。


 私たち2世も、今日まで1世の伝統に学び、その業績の拡大に努めてきました。その結果、人権、生活権、居住権、企業権、社会福祉など、1945年の祖国解放当時や、朝鮮総聯結成当時では考えも出来なかった多くの権利を獲得し、守って来ました。

神戸市長田の様子。在日1世は大変な労苦で道を切り開いた。

(イオ 2004年2月号より)

 現在日本と朝鮮民主主義人民共和国とは、国交がありません。在日本 朝鮮人総聯合で活動をされる場合、不便な点はありますか?
 大変不便です。日本当局は一貫した対朝鮮敵視政策を続けてきています。明治維新以来「脱亜入欧」の思想のもと、アジア諸国への侵略と支配の歴史をつくってきました。
 日本国民の根強い朝鮮蔑視があります。差別の意識を解消する国家的、国民的な努力もされてきませんでした。その結果、この半世紀、不便と言うより大変な差別、抑圧、弾圧のなかで活動せざるをえなかったのが実情です。

2003年に行われた「関東大震災朝鮮人虐殺80年在日本朝鮮青年学生追悼集会」での演劇の様子。朝鮮大学校生が演じています。

 (イオ より)

また一部でしょうが、過去朝鮮侵略と植民地支配に関わった人達やその子孫、元来の右翼、保守勢力、それと一体となった大手メディアが、共和国ー朝鮮に対する検証と根拠のない過剰報道を繰り返して来ました。
 とくにここ2年間、日本国民のなかにダーティなイメージが「洪水のごとく」流されています。
 真の朝・日友好親善、地域における異文化共生を願う私たちの運動の前に大変大きな障害として危惧すべき状況がつくり出されています。
 日本政府は、合法的かつ平和友好の運動をする朝鮮総聯を不当にも「破壊活動防止法適用容疑団体」と指定し、公安調査庁を中心に常に監視、尾行や、干渉、妨害行為を続けてきました。

朝鮮会館高知。高知県本部の建物です。

高知シティFMのすぐ近くにあります。

 今の高知の朝鮮会館建設時にも、土地を持たれている人にいろいろ形での妨害がありました。建設段階では、設計事務所に行っては「設計図を渡せ」という妨害活動もありました。
 そして他の地域でも朝鮮会館に出入りするものを盗撮し、監視する。主要役員を尾行する。若い活動家への買収行為と文書などの提供要求などの妨害活動が、公安当局にて行われてきました。 
 それに対して抗議をいたしますと「それはわれわれの通常業務である。それは今後も続ける。」と公安側は言います。
 大変困難な運動を続けています。そのほか警察による弾圧行為も「法の名」によるものがたくさんあります。
 「外国人登録証」は常時携帯です。お風呂にももっていかないといけないわけです。今は少なくなりましたが、意図的に朝鮮人をターゲットにした常時携帯義務違反の摘発を限りなく行われました。
 交通取締りのときは運転免許証と外国人登録証を出しなさいと。尾行しておいて出しなさいとか。風呂へ行くことを確認して尾行して、その場で提示を要求して、持参していなければ罰金とか。
 わたしも過去広報活動の折、持参していなくて、ひっかかったこともありました。
 在日同胞への支援活動をされていると思いますが、周りの日本人の意 識は変化がありますか?

 勿論大きく変わってきました。特に日本の朝鮮侵略と植民地支配の過去を正しく清算しなくてはならないとの考えや、そのための各界での交流や、取り組みは日増しに前進してきました。そうして1日も早く朝鮮・日本の関係を改善し両国間に善隣友好関係を結ばなくてはならない。と考えそのために市民レベルの交流を進めてきました。


 高知でも労働者や市民、教員、自治体の議員、女性や青年などの中で日朝友好団体がいくつもつくられ色々な友好運動、親善交流の取り組みが進めらて来ました。
 結果在日同胞の生活権、人権、民族教育の権利など色々な権利擁護の運動に日本の広範な市民、政党、労組、団体、自治体、議会の皆様が深い理解を示され、大きな支援と協力をいただきました。大変感謝しています。


 しかし高知でも、全国でも大きく前進を続けてきましたが、まだ多数を占めるまでにはいたっていません。特にこの間の拉致一色の報道攻勢でその流れは大きなダメージを受けました。早く回復される事を望んでいます。

 子弟教育に朝鮮学校などがあるようですが、高知にはありません。そ のあたりはどうされているのでしょうか?
夏季学校の様子(写真は黄英信さん提供)
 先に述べましたように正規の朝鮮学校は全国に大学校1校、高級学校11校、初級、中級学校が106校あります。
 高知にはご指摘のようにその朝鮮学校はありません。とても1000人に満たない同胞で自力で学校を設立運営することは他の問題はさておき財政的に無理です。

 従いまして四国は松山に四国朝鮮初中級学校を設立し、共同運営し、そこに四国四県の対象児童を就学させ民族教育を施してきました。

未来を担う子供達にいかに正しい民族の自覚と誇りをしっかり身につけさせるのかということは大変重要です。従って日本の学校に学ぶ大多数の同胞児童に対し、土曜児童教室や、夏季学校などの非正規の児童教育にも力を入れています。
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