3Dとまちづくり その2
 今週のゲストは、建築設計士であり、3Dを活用されている田上圭一さんです。今日のテーマは「3Dとまちづくり その2」でお話を伺います。
 まちづくりのなかで、市民参加のワークショップなどでの活用が期待されるのではないでしょうか。
都市計画事業などで活用されると、都市像が具体化できると思います。そのあたりの事業計画はどうなっているのでしょうか?
 実際、あちこちで使われ始めてるのですが、高知県に限りますと敷居が高く感じてるのか、なかなかまだ手法として使われてないようです。
 敷居の高さなのですが、どうしても出来上がったものを(3Dで)つくろうとしているのではないか。と私は考えています。
田上圭一さん
 行政当局の反応はどうなのでしょうか?住民説明会などでカラーコピーだけを見せられましても、「こういう具合に地域が変わりますよ」といわれましてもイメージが浮かびませんし。県職員や市職員の技術職はなどは3Dを研修すべきではないでしょうか?
 別に3Dが全てではありません。
あくまで手法の一つなので、全てではないのですが、少なくてもこのようなことはこうすればできる位は知っていて欲しいですね。
 まずは、何を伝えたいのかをしっかりさせていれば、道具として利用することが可能だと思います。3Dを使ってやるという考えはありません。こういうことをするのに3Dが便利だとか、スケッチが便利だとか、模型が便利だ。という形で考えていただきたいのです。
 見せることによってどういう形になるのかがわかります。
全員ではではないですが、3Dで見せるのは計画ができあがって最後、に使う物と思ってる方が、行政関係者の中にまだおられますからね。
 市民参加といいますか、そのなかには技術のあるかた、ない人います。3Dは当事者の意見を上手く引き出すための道具の一つであると言うことですね。
 スケッチであれ、模型であれ、手書きであれ、3Dであれなんでもよいわけですね。3Dだけが特化しているわけではないのですね。
 やはり市民参加の意見のをどれだけ集約できるのかが、行政の姿勢としては大事であると言うことですね。
 とにかく市民がわからないものを出して、「これどうでしょうか」ということが問題であると思います。わかりやすいものを出して意見を取り入れるようにしていただきたいですね。
 市民の方がわかりやすい方法とは何か。その一つが3Dが使えるということです。

 田上さんが設計されたある居酒屋の3D。こうした店舗のイメージを提案し、施主の意見も反映させて、実際の設計を行うそうです。

 公共事業も全く同じ考え方で行政側がするべきでしょう。その場合の市民参加の道具と言う点では3Dは優れものであると思います。

 
 3Dを使用したまちづくり。市民として押さえておかねばならない点、注意しなければならない点はどのようなことでしょうか?
 むしろ意見を市民のほうがいかに出すかということです。それが具体的な意見としてどれだけ出せるかと言うことです。そのための道具として3Dは使えると思います。
 自分の家の前はこうなんですよ。他から見てこうなんですよ。と言葉で話されても、それを他の人に説明しませんと、それは個人のエゴになります。
 逆に見せれるもので提案すれば、個人の意見が全体としてOKであれば、それでOKです。
 上から眺めたような、鳥の目で見たような図面やカラーコピーの絵なんかではわからないということですね。
 自分の家から見た道路や街路計画はこう見えますとした方が、具体的な意見は市民側は出せますね。発言しやすいと思います。

 新堀川を埋め立てる道路計画図。住民説明会で使用されたそうですが、この図面から周囲がどのように変化するのか想像できるのは一部の専門家のみでしょう。

 しかも実施設計図面のようですので、仮に住民の意見を聞いても計画の変更は極めて難しいのではないでしょうか。

 やはり自分の目線で確認しませんと。プロは図面からも理解できますが。皆さん自分の目線で見たいのですね。自分の目線で見た状態でないと判断出来ないのです。
 わけのわからない図面を見せられて、さあどうしましょう。ご意見は。これで宜しいでしょうか。といわれましてもなかなか意見は言えないということですね。
 それを実際に散歩している道、散歩の目線で見る。車の目線で見る。それが出来れば、ここはどうでしょうか?という質問が出ます。それに対してどうですよと説明が出来ます。それをまた3Dで造ってみてどうですか?と他の人にすぐ見せることが出来ます。
 結局3Dはコミュニティの道具ですね。
 結論があって3Dを活用するのではありません。あくまでまちづくりの「道具」として活用すべきなのです。
今までの、開発等の説明は、全体のイメージは説明しても、それが個々になるとなぜかごまかすようなところがあります。
実際にできてしまうと、いろいろな問題が起こります。
それを少しでも少なくして、良い物を作るとする本来の計画が必要です。で、わかりやすい情報を公開して、検討すると言うことが必要なのです。
また、自分の意見だけでなく、他の意見も検討できると言うことがますます必要になってくると思われます。
 

 収録の様子です。パソコンを持参いただきました。収録の合間に、実際につくられた住宅や店舗、公共施設などを3Dの画面で見せていただきました。 

 3Dが加わりますと実に説明がわかりやすいです。

 

 
 3Dを活用するために「3Dファン倶楽部」という会合があるそうですね。田上さんもそのメンバーであるとうかがいました。随分早い段階から活動されていたようなのですが・・。どのような組織で、どのような活動をしているのでしょうか?
 実はこれは3DのNPOのようなものです。

 私は10年ぐらい前から、模型的なもので、建築の打ち合わせをしていました。
 それに対して、自分達もやってみたいという話があり、グループをつくろうということになりました。
 普通はメーカーの、パソコンのソフトのユーザークラブというものがあります。ソフトの勉強会であって、どういうことを使いたいということにならないから、「3Dのファンクラブ」という形でつくりました。
 メーカーはどうでもいい。ユーザーであればベンダーも入っても言い。そういうことでつくりました。

 ソフトを限定しないで、ユーザーとしての事例を持ち合って情報交換する会です。今は香川県の池田さんが会長です。
 年に1回、大阪か東京で勉強会。6周年ということで今年は2月12日に鳥取県米子市で勉強会をしました。鳥取県建築士会とも一緒にやっています。鳥取といえば大山スキー場と蟹です。勉強会だけでなく、スキー&蟹&温泉という話もあります。
 現在会員は600人を越えています。皆さんいろんなソフトのプロですので、勉強会で集まってときに詳しい情報を交換いたします。かなり面白いですね。また高知でもやると思いますので、その時は皆さんにも来ていただきたいですね。
 また、M.A.PというAppleのユーザークラブも主催しています。
これは、3Dがどうしても建築関係に限定されがちなので、それ以外の職種の方との異業種間交流としてのユーザークラブです。
どちらも誰でも興味が有れば入れるクラブです。
都市のデータを入力するためには、国、県、市町村ばかりでなく、電力会社、電話会社、ガス会社などの協力も要りそうですが、そのあたりはどうなのでしょうか?現状はどうなっているのでしょうか?
 データだけ頂きましても殆ど使えないのが現状です。
 使える情報を公開していただきたいですね。どこへ行きましてもレーザー測量データというものはあります。それを使用しますと土地のデータはある程度できます。
 それは都市をつくる。建物をつくるデータとしては不十分です。それを使いやすいデータとして何か方法はないだろうか。実はその時に潮江地区でNPOを作ろうとしました。

(いつでもどこでも3D。はりまや橋サロンにもパソコン持参で来ていただきました。無線LANが整備されれば、その場所で提案ができます。)

 商店街の改造なども、すぐ現場で3Dを活用すれば、「ワークショップ」が出来るのではないでしょうか。

 NPOの専門家集団が、行政と住民との間を取り持つ役目をされるのですね。情報公開をしながらまちづくりをするためにNPOをこしらえられたということなのでしょうか?

 そうです。NPOは中立的な立場ですので、なんかの計画に対して、それを「出来ませんよ」ということも話が出来ます。
 実際にやるほうがいいのか、やらないほうがいいのか。ゼロからの話もできます。そうしますと、そこに住んでいる住民にとって一番良い方法が何であるか提案が出来ます。
 どうしても市から受けて仕事をする。県から受けて仕事をする。そういう形だけでは、話が出来ないと思います。そういうことでNPOはどういだろうかということになりました。
このような、情報インフラはやはり、個人、会社ではなく、社会的インフラとして、官公民が協力することが、必須だと思います。

 なかなかNPOの役割は大きいですね。
 そうです大きいです。

TAG建築設計事務所事務所と住宅も兼ねています。

(写真は田上圭一さんのホームページより転載させていただきました。)

 先進事例がありましたら、紹介下さい。
 先進事例といえるかどうかなのですが、台湾などは、GPSデータを公開していて、それを利用した町づくりもおこなわれてるようです。
 3Dファンクラブのホームページです   http://fun3d.pro.tok2.com/