地方自治の今までと今後のありかたについて
今週のゲストは前高知市長の松尾徹人さんです。今日のテーマは「地方自治の今までと今後のありかたについて」です。
 松尾さんは自治省(現総務省)に入庁され、国家プロジェクトを担当され、いくつかの県庁にも出向されていました。また平成5年からは2期高知市長も歴任されました。高知市政でも重要な課題に取り組まれていました。そのあたりの話を伺います。
高知市の中核市指定について伺います。政令指定都市や都道府県に順ずる権限を持つと言われていました。保健所の機能委譲と、都市開発許可が市で出来ることぐらいしか知りません。他にどのような特典があるのでしょうか?

全体では2000項目の県の権限が、高知市に下りてきました。中核市の制度が出来たのが平成6年(1994年)頃です。中核市はなぜ出来たかいいますと、地方についての権限は県が殆ど持っていました。やはり市町村独自で扱える力のある市(人口規模30万程度)は、権限を委譲していこうということで出来ました。地方分権の先導役であり、私たちはいち早く指定を受けようと取り組んできました。結果的には四国で一番早く中核市になりました。高知市は中核市になりました。


それ以外に福祉の分野や環境の分野についても許認可権限を中心にして市になりました。それまでは、市が窓口になり県に上げていたものが、市独自で判断できるようになりました。そういう意味では処理が早くなりました。市が独自に持っていた分野と、新たに持った分野とで「総合調整」がやりやすくなりました。特に平成10年の集中豪雨の際にも、保健所を高知市が持っていたことで、災害の事後対応がスムーズに行きました。
 ただ現在の中核市の権限はまだまだ不十分です。例えば都市計画決定の権限などは降りていません。政令市並に中核市の権限を拡大していただきたいこと。またあわせて地方団体への規制緩和を進めていただきたいことです。せっかく権限をもらっても実際には法律でがんじがらめになっています。やはり裁量権の拡大がなければ、本当の意味での権限委譲ではないではないか。そういう主張をずっとしてまいりました。

1998年の豪雨災害について。高知市におきましては、1975年、76年以来の未曾有の豪雨災害でした。

その時の災害対策本部長としての救援対策、市民への避難勧告やいかがでしたか?またその後の浸水対策、マンホール強化対策は進展しましたか?

高知市役所
 
集中豪雨は異常な雨でした。時間雨量129ミリというものでした。しかしその背景には
それまで遊水地帯であった田んぼなどが埋め立てられ宅地化したことなど人為的な面がありました。そういったことから、特に「里山保全条例」を作ることによって周辺の山すその開発を抑制する。市街地調整地域の開発も抑制しようではないかと対策をいたしました。
 マンホールにつきましても、蓋が開かないように、フックをつける工事、高知市内1万8千箇所に工事をしました。昨年までに終わりました。あとは河川改修ですが、県の管理ですが、激特事業ということで、今年中には終了いたします。このことによりまして、今後は異常な雨がありましても対策はある程度できたと思います。
 ただ問題は震災対策でしょう。南海地震対策も含めて。自主災害組織と言いますか、「自助、共助、公助」という自らのみを自らで守るというお互い助け合うという地域の体制作りと、ボイランティアの育成が大切であると思います。
イオンへのシネコン設置問題について市長として反対された理由は何ですか?街が寂れるからなのでしょうか?当時も今も市民の反応は分裂していると思いますが?
高知市の日曜市。藩政時代から続いています。 沖縄那覇市のシネコン。新都市天久にあります。

シネコン問題は裁判所の判決で私どもの判断が間違っていると結論が出されました。今更という感じがすると思われるでしょう。法律論では負けたかもしれませんが、政策論としては判断は間違ってはいないと思っています。
 それはシネコンに反対しているのではありません。シネコンは今の映画文化として高知市にあって欲しいと思っています。つくる場所の事をいっているのです。その背景には今の高知市の街の現状を見たときにこれではいけないと思いました。高知市は城下町としての歴史が400年ありますね。その町並み、城下町としてのありかたを見てきたとき、中心市街地の空洞化が進行しています。中心街に人が住まない。郊外に人が住んでいる。ドーナツ化現象が進行しています。商店街も空き店舗が増えています。


 私は城下町の賑わいが街として必要なんではないかと思います。その意味で中心部に人口を呼び戻して、周辺部の開発を抑制する。これはヨーロッパ型のまちづくりです。ヨーロッパとアメリカではまちづくりの佇まいが全然違います。日本はどちらかと言いますとアメリカ的な志向をしています。郊外の大型店と一体なんですね。
 しかしヨーロッパは歴史のある街ですね。昔のもの、歴史を街を大切にしようという考えが全面に出ています。スーパーでも大型のものをつくることには規制がかかっています。
古い町並みや景観が保持しています。個人商店街の元気なまちづくりでもあります。


 東京大学の神野教授も「人間回復の経済学」のなかで、高知市の対応を評価いただきました。「先の先を読んで」、シネコンをつくるのであれば、中心部にという考え方の中で西武の跡地に出来ないかと努力をしてきました。これからについても大いに議論をしていただきたいと思います。

閉鎖されたグランドオリオン映画館(那覇市中心部)
閉鎖されたとでん西武百貨店跡(はりまや橋)