健康寿命を伸ばす方法とは

 今週のゲストは高知市健康福祉部健康福祉担当参事で、医師の堀川俊一さんです。今日のテーマは「健康寿命を伸ばす方法とは?」でお話を伺います。健康寿命とは聞きなれない言葉です。介助の世話がなく自立して生活できる年齢を健康寿命と言います。具体的には何歳ぐらいまでで、どのような状態を言うのでしょうか?
「健康寿命」といいますのは、後何年まで自立して健康で暮らせるのかということなんです。なかなか計算することが難しかったのです。介護保険制度が始まりましたので、介護保険の認定を受けるまでが「健康」というふうに決めますと全国どこの市町村でも計算することが出来ました。
 高知市の「健康寿命」を出してみました。介護保険が始まったときに、男性の健康寿命が74・7歳、女性が79.5歳でした。ところが年々認定を受ける人が増えていますので、短くなっています。それは健康状態が悪くなったというより、これまで認定を受けなかった人が、認定を受けるようになったということになります。
高知市の介護予防の目標です。元気な期間を伸ばし、要介護認定から亡くなる前の期間を短くします。
 認定を受けられてから亡くなられるまでの期間が、高知市ですと男性で
26ヶ月、女性で53ヶ月くらいあります。高知市ではこれを2割ぐらい短くすることを目標としています。
 そのなかで、昨日はパワーリハビリテーションの話をいたしました。もうひとつは「いきいき百歳体操」というものがあります。パワーリハビリテーションと同じように筋力をつけていくものです。マシンを使わなくて、そのかわりに重りを使います。ゼロから2・2キログラムまでの
10段階の負荷を増やすことが出来る重りを手足につけていただいて、運動を行います。
 最初は高齢者20人、67歳から96歳までの人たちに集まっていただきました。筋力が、右ひざを伸ばす力が、やる前は6・8キログラムが、実施後は16・1キロに平均になりました。
 歩く早さも5メートル歩く時間が、3分の2に短縮されました。特に最高齢の96歳の女性です。やり始める前は杖をついて、5メートルを歩くのが9・2秒かかっていました。それが、3ヵ月後には小走りに走るような感じで3・3秒になりました。

 

手や足に負荷(重し)を乗せ、パワーリハビリをしています。
 このように大きな成果がありました。高知市ではさまざまなところで、「いきいき百歳体操」をやるようにしています。広げていくようにしています。
 効果があることには驚きました。男性が74・4歳で、女性が79・5歳が「健康寿命」なのですね。伸ばす方法はさきほどの「いきいき百歳体操」になるのですね。パワーリハビリも有効なのですね。十分成果があったということでしょうか。
 まだまだ成果ということではないです。ひとつの方法として有効であると思っています。
 元気で長生きできる条件とは何でしょうか?一番大事なことは何でしょうか?食べ物、運動、家族、社会生活、資産 、精神衛生、保健衛生の要素は何が重要なのでしょうか?
 それらはどれも大事なことです。今日も「いきいき百歳体操」の話をさせていただきました。運動をして元気になって、何がやりたいか。それがない高齢者の方がいます。いくら運動をし、筋力をつけても、その筋力を使って次の活動がなかったら、ついた筋肉もまた次第に落ちてきます。ですから、精神的なものもすごく大事です。健康ということを考えてみましても、私たち医師は検査し、検診しこの人の健康度をこうと決めたものと、本人が自分は健康と思っているかどうか。はその後の寿命に対しては変わりがありません。
 同じ健康状態でありましたら、本人が「血圧が高いから健康ではない」と思われるのか、「血圧が高いけれども、元気だよ」と思うのかですごく違ってきます。
 健康寿命を伸ばす方法は、ご本人の考え方もしかりなのですが、周りの人たちとの関係とか、社会生活全般との関わりも大きな要素になりますね。
宅老所でのいきいき百歳体操実施中

 今まで私たちには「お年寄りには無理をさえてはいけない」と言う考え方がありました。出来ることはしていただくことがこれからは大事であると思います。
 ただ親切にすることが、その人たちの能力を落とし、やる気をなくさせていることが、多々あるのではないでしょうか。
 介護保険制度ができまして、ヘルプすることにより、健康寿命が伸ばせない弊害とはいえませんがなっている傾向が問題あるのでしょうか?

 そうですね。やはり介護保険の目的は「自立を目指す」という目的があるはずです。そうでないと、どんどん介護保険を利用する人たちが増えれば、制度自体も持たないと思います。
 スキーの三浦敬三さんなんかは,例外中の例外でしょうが、100歳で海外でスキーで滑降するなんていうのは。元気であれば高齢者でも可能だと言うのですね。
 そうですね。どんなに年をとっていましても筋力がつくことはあります。本当に個人差が大きいのは,加齢の世界だと思います。
 「年寄りの冷や水」とか言って、お年寄りに「これはしてはいけないとか」いう一般論や、行動を制約する発言や、いろいろ手助けすることは、必要ではないということでしょうか。
 本当にやりたいことをどんどんやっていただくことが、これからの高齢化社会だと思いますね。
*高知市介護関係の写真は堀川俊一さんより提供いただきました。
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