原子力政策と地方自治について
 
西村 今月のゲストは、沢山保太郎東洋町長です。友人で市民オンブズマン高知代表の窪則光さんもお話に加わっていただきます。4月22日の東洋町長選挙で有効投票数の70%を超える支持を受けられ当選されました。国の強引な文献調査の推進に対して東洋町民の民意を示したとして全国から賞賛されています。
 
沢山町長は当選の翌日から文献調査の中止を原子力発電環境整備機構に申し入れられました。そして正式に中止になり、文献調査は白紙撤回されました。早速公約である「文献調査の白紙撤回」は実現されました。現在の率直な感想をお聞かせ下さい。
 
沢山 自分だけでなく東洋町民の皆さんは同じだと思います。心は五月晴れ。すがすがしい気分ではないかと思います。
 
西村 4月23日に甘利産業経済大臣は東洋町長選挙の結果について「誤解したまま賛否を諮ると、こういう結果が出る」「テレビを見ると、核のごみを引き受けると、汚染の危険性が地域全体にあるみたいなことを言う人もいる」「処分場については安全性は120パーセント確保されている」と発言されておられました。この発言についてはどのように思われますか?
 
沢山 120%との安全性と大臣は言われるが、「傍線」を引っ張るべきでしょう。「マイナス120%」であると。危険性が100%を超えていると考えるべきでしょう。甘利産業経済大臣が一体何を根拠にこのような発言をされているのか全くわかりませんね。
 
西村 沢山さんは室戸市議時代から、東洋町の高レベル放射性廃棄物最終処分場問題を観察し、事実関係を追及されてこられました。今回の騒動を総括するとすれば、どのようなことになるのでしょうか?また反対運動から得られた教訓はどのようなことであると思われますか?
 
沢山 国の放射性廃棄物の処分の問題が何ら計画的にどうすればいいのか何もなされないままに来ていたつけを、こういう貧しい地域(東洋町)に大きな交付金をもってこようとしたということですね。
 そういうやりかたは、「棄民」というか、ここ(東洋町)の辺鄙なところに住んでいる人は見捨ててもいい。そんな考え方を国は露骨に出してきていましたね。
 
 それに対してこの小さな地域の、僅かな人口ですけれどもその人達が、団結して力を発揮して、それを(高レベル放射性廃棄物最終処分場文献調査)を阻止しました。
 言葉は悪いですが「1寸の虫にも五分の魂」というとがあるんだけれども、本当に小さなむら(地域)の人達が大きな反撃をして国の間違った政策を正して行く大きな1歩をしたと言う点でよかったと思います。
 
 今回の核廃棄物の問題については、前町長や町議会などすでにみなが知らない間に「呼びこんでいた」んだよね。奥座敷まで原子力環境整備機構が呼び込まれ、入り込んでいたんだよね。
 そういう町民にとっては苦しい状況。反対運動をするにも相当深くまで入り込んでいる。ですので若い人やらお年寄りの人たちまでそれぞれが団結して、(原子力発電環境整備機構)を追い出してしまったというのは、こういう反対運動でも今までなかなかなかったのではないでしょうか。
 
西村 沢山さんの後援会長さんが沢山さんの当選を確認した会場で「この選挙を通じて野根(のね)と甲浦(かんのうら)がはじめて1つになった。対立を乗り越えて町民がひとつになって東洋町を盛り立てよう」と言われました。町民の皆様のエネルギーを活用する方法についてアイデアなどはございますか?
 
沢山 本当に言われるとうりで、野根と甲浦が合併して東洋町ができたのですが、両方の地区の交流は盛んではありませんでした。
 かつては役場(東洋町の)をどこにするのかで、両地区が引っ張り合いをした時代もありましたね。しかし今回の騒動で野根も甲浦も一致団結した。
 7割以上の町民が「反核」「文献調査反対」で手をたずさえてやった(運動した)ということです。新聞報道などでは「町が2分した」とのことでしたが、むしろ町は「一体化した」と言ってもいいんじゃないかと思います。
 
 全体として、住民のパワーで、町の執行部や役場がやってきたことをひっくり返したことは、一種のパリ・コミューン的な状況が起こったと思うね。これは本当の民主主義。直接民主主義で問題を決着させたという意味で、パリコミューン的な住民の力を制度的にも定着させないといけないと思います。
 
 民主主義というものの本当の姿を残していかないといけないと思います。それは制度とか思想ではなくて、1つの大きな事業だと。産業というたらどうでしょうか。これをやれば本当に町(地域)がよくなる。そういうものとして定着させなければならない。そのように思いますね。
 
西村 この番組はブログ活用の番組です。東洋町も沢山町長も大変有名になりました。今後も持続的に情報発信をマスメディアの活用ばかりでなく、ブログも活用されて全国に情報発信していただきたいと思います。
 窪則光さんのアイデアですが「反核町長 沢山保太郎の町長日誌」(仮題)をこしらえば、高知県知事である橋本大二郎さんのブログ「だいちゃんぜよ」と匹敵する人気ブログになると思われますが・・。
*沢山保太郎さんのブログヤスタロウの東洋町長日誌が5月25日に開設されました。
 

沢山 人気ブログになるかどうかはわかりませんが、全国に(情報)発信することはたくさんあると思います。核廃棄物の今回の問題もそうです。
 それからさっき言ったように民主主義を徹底していくといろんな問題がたくさん浮かび上がります。次々と利権的な側面と古いしがらみというものをはっきりさせてどんどん捨てていく。いうことをしていますので、1つ1つを皆さんに報告し、披露していくことで、批判もしていただきたいと思っています。
 
西村 沢山さんは室戸市議時代からオンブズマン活動を通じて、「行政は透明で民主的でなければならない」と言われてきました。東洋町の行政改革や町政運営でこれから実行しようとする施策などがあれば、おかまいない範囲でお聞かせ下さい。
 
沢山 庁議というのがあります。町政を運営する執行部の会議です。これなども即座に公開することにしました。町政の最高決定機関がをすることを町民や報道陣に見せる。見せたところで何も損することはありませんし。
 町民にわかりやすいし、決定の過程もすべてわかりますし。

 また「地域評議会」というものを各地域につくろうとしています。小さいブロックに分けて、例えば野根地区であれば、3つぐらい、甲浦地区であれば4つぐらい地域評議会をつくる案をもっています。


 地域評議会をこしらえてそこでも地域の問題を討論して物事を決定する。そこへ若干の予算もつける。住民自治の体制をもっと強化する。

町議会だけではとてもいろんな(地域の)ことが討論されたり、審議されたりすることがないので、できるだけ、住民の直下で物事が決まっていく。そういうふうにもっていきたい。

そのように考えています。(財源は役場前の駐車場からあがる収益金とかを活用したいと。あくまでアイデア段階と断られての発言でありましたが)

 
 財政の運営において1番問題になるのは、法令規則をちゃんと守らないかん。ということでしょう。補助金1つについても年間現在3000万かそこらは町が出しています。しかし使途については、補助金の申請書に上がっていない事例が多い。
 「お金をこれだけ下さい。」という申請書はありますが、「何の目的で使うのか」が書かれた申請書がない。使ったお金を清算する場合でも領収書1枚ないというのが現状。
 どのようにして町役場がお金を出してきたのか。規則には全部記載されている。お金を払うにはその債務を実証するものを添付しなければならない。要するに領収書を添付しなければなりません。そういうことが1つも守られていない。
 驚くべき状況ですね。
 

 また役場前の生見(いくみ)の海岸の駐車場。年間1000万円を超える収益を上げています。町の駐車場として売り上げがあるけれども、1円もその収入が町に入らない。特定の団体に全部せしめています。

 こんな事実も東洋町民は知りません。町の駐車場だから町へいくらかはいっていると思っています。1円も東洋町にはいっていません。そういう契約を全面的に見直し、解除する。それは「違法だ」ということです。

 しかも物凄い損害です。(駐車場の建設と維持管理費は町が行い支払っている)行政改革というものは法令遵守することが1番です。

 
西村 窪さんにも伺います。オンブズマン活動をされた人が、首長になるということの意義はどういうところにあるのでしょうか?
 

 今、沢山町長から言われたおり、従来はオンブスマンは行政をチェックすることが役目でした。

今度は執行部の長になりました。町政においていろんなお金の申請はあっても使い道についての事後のチェックができていない。


 いうことがまず大きくわかりました。ですのでそういう法令順守は最後まで、「入り口から出口まで」しっかりチェックするということが、本来のオンブズマンの姿であると思います。

 今までは「出口」のところしかオンブズマンとして出来ませんでした。やはり「入り口」から「出口」までチェックしていくというのがこれからの1番の課題でしょう。
 
西村 オンブズマン活動で地方議会の議員になられた人はいました。沢山さんも室戸市議会議員でしたし。首長になったオンブズマンの人は沢山さんが全国初ではないでしょうか?
 
 全国初ですよ。やはり対象が社会というか広い範囲に入ってきました。今までは地方議会とか、行政とか部分的なものでした。東洋町であれば東洋町の財政の流れから、申請された補助金の使い道にいたるまで、チェックしていく。大きな広い範囲がチェックの対象になりました。

 だからこれからは町長として、チェックのしほうだいだよね。

 
西村 地方自治の本来の姿に東洋町は戻るということでしょうか?
 
  そのとうり。
 
西村 地方自治ということでも東洋町は全国的に注目されるということになるのでしょうか?
 
 そうです。沢山町長が言われていた直接民主主義。住民の直接的な意思決定方法。たとえばスイスのような直接民主主義というか。住民1人1人が主人公であって本来の姿でできますね。
 
西村 人口が3000人程度の町ですから、白浜海岸に集って直接民主主義で何かを決めるとか。
 
 1年に1度くらいは町議会と違ったことを住民全体会議で決めるとか。
 
西村 地域評議会をいくつかの地域でされますね。その地域評議会が集る大会のようなものでしょうか。
 
 それのおおきなものが全体会でしょう。スイスのようになれば観光資源になるかもしれないね。そうなれば民主主義の学校に東洋町がなって全国から地方議員なんかが視察に来るだろうし、研修をすれば良いと思う。沢山町長が講師で。地方自治セミナーですね。