自民党の新憲法改正草案について  その2
 
 今週のゲストは、高知県県議会議員であり、自民党高知県支部連合会政務調査会長である中西哲(さとし)さんです。
 今日のテーマは「自民党の新憲法改正草案について その2」お話をお聞きします。自民党の「新憲法草案」では「第2章」安全保障の項目で、新設で九条の2項は
「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するために、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を組織する。」
 「自衛軍は、前項の規程により任務を遂行する為の活動を行うにつき、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。」とあります。これは戦前の軍隊のように、「統帥権」があり国会とは関係ない組織ではなく、「文民統制」の軍であることを定義し、制約しているのでしょうか?
 明治憲法第11条に「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」と規定されています。戦前の「統帥権」とは日本帝国軍隊の最高指揮権は「大元帥たる天皇陛下」にのみあるという考え方です。戦前は議会で軍隊をコントロールする仕組みではありませんでした。
「新憲法草案」9条2項にある「内閣総理大臣を最高指揮者とする自衛軍」とはまさに文民統制を規定したものです。戦前の「統帥権」とは全く違います。
 そして現在の日本国憲法第66条2項に「内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければならない。」という条文があります。この項目は自民党の新憲法草案でも残っています。
大日本帝国憲法の発布の様子です。
大日本帝国憲法では統帥権が明記されています。

 「文民統制」に気遣いをされているということですね。


 自民党の「新憲法草案」の第2章 9条の2 の3に、
「自衛軍は、第1項の規定による任務を遂行するための活動の他、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる緊急事態におけ公の秩序を維持し、又は、国民の生活若しくは自由を守るための活動を行うことができる。」とあります。これは海外へも自衛軍は展開することなのでしょうか?

 そうです。国際貢献のためには日本軍の海外派遣も認めるということです。まさに、これが国際貢献の決意であります。
現在は、自衛隊がイラクに派遣されていますのは、国連の決議(1441、678,687 )によって米軍、英軍等のイラク侵攻が正当化された事を理由にしています。。
 「法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる緊急事態におけ公の秩序を維持し、又は、国民の生活若しくは自由を守るための活動を行うことができる。」とありますが、イメージ出来ません。
 例えばどのような事態が想定されているのでしょうか?
 テロ組織の日本攻撃から国民の生活、自由を守るために海外のテロ組織の拠点を攻撃することに日本も協力するということです。
 現在でも、国内において海外のテロ組織による攻撃から国民を守るために、警察による原発の警備や、駅、空港の警備が強化されています。よく見られますのは東京浜松町などで警察の機動隊が警備している風景があります。これなどはテロの防止の為のものですね。
世界各地でのPKO活動の様子。それ以上の国際貢献が求められることになるでしょう。
 最近アメリカ軍は世界的な規模で再編されています。アメリカ陸軍の総司令部の一部が厚木基地に移転するようにも言われています。米軍との関係は、憲法改正により何が変化するのでしょうか?
 米軍の再編成(トランスフォーメーション)と憲法改正とは関係ないと思います。米軍の再編成はソ連が消滅し、従来の東西冷戦構造が消滅した後に発想された事です。
 国際的テロ組織と対決するために米軍が軽快に世界中に展開するための再編成であり、アジア地域だけでなくヨーロッパでも行われております。但し、米国は日本を軍事行動を一緒にする同盟国とするべく、いろいろな場面で日本に対して憲法改正の要求をしているのではないかと予測しています。
 自衛軍の目的は、日本の国土と国民を「専守防錆」で守ることだと思います。であるならば、現在の日本にある在日米軍基地は縮小されることになるのではないでしょうか?アメリカ軍施設の施政権返還はより進行するのでしょうか?

 マスコミで報道されていますとおり、米軍はアジア地域においては米国防衛のためのラインをこれまでの朝鮮半島、日本のラインからハワイ、グアムのラインまで下げる意向です。
 しかし、日本側が先に述べたように自衛隊の装備がいびつなものとなっており、自衛隊単独で日本を守ることが難しいために安保条約に基づき、米軍の日本駐留を求めていると云われております。米軍は将来は横須賀と佐世保にあるドック施設(特に横須賀は空母が入れるドックがあります。)や、厚木はわかりませんが、岩国の海兵隊航空基地等の施設以外は返還するだろうと思います。
 自衛軍の規模はだいたいどの程度と想定されているのでしょうか?
また将来国民徴兵制度は復活するのでしょうか?
 自衛軍の規模は現在の自衛隊の規模(下記)で充足率が95%弱の状態ですので大幅に増員することは無理でしょう。将来の徴兵制度の復活は私にもわかりません。

 参考までに昨年の防衛白書で「自衛隊の定員及び現員を調べてみました。
以下のようになっています。なかなか自衛隊も定員を確保するのが、難しいのが現状です。

      自衛官の定員及び現員(平成17年3月31日現在、防衛白書)

区分 陸上自衛隊 海上自衛隊 航空自衛隊 統合幕僚会議  合計
定員 157,828     45,842      47,361    2,149   253,180
現員 147,737     44,327      45,517    1,849    239,430
充足率  93.6%    96.7%      96.1%     86.0%     94.6%

(参考)  自民党の  ホームページ
(参考)  防衛施設庁  ホームページ 
(参考)  17年度版「防衛白書」