新堀川の生態系保護の重要性について
 今週のゲストは、高知大学理学部自然環境科学課教授の町田吉彦さんです。今日のテーマは「新堀川の生態系保護の重要性について」お話を伺います。
 新堀川は、浦戸湾最深部の堀川と、江ノ口川とを繋いでいる河川です。30年ほど前までは汚染されたどぶ川でしたが、下水道整備などで環境が浄化され、希少生物も発見されています。しかし県の都市計画では、新堀川を埋め立て、一部暗渠にして4車線の都市計画道路を建設する計画になっています。
 その新堀川でシオマネキという絶滅危惧種の生物を発見されてと伺いました。新堀川のどのあたりで生息しているのでしょうか?
 新堀小学校のすぐそばなんです。高知市の文化施設のかるぽーとは「目と鼻の先」なんです。高知市の中心部です。
 新堀小学校が対岸にありまして、横堀公園があります。あのあたりなのでしょうか?
そうです。ひじょうに川底が汚く汚れているところですね。
石垣は横堀公園です。
この泥地にシオマネキは生息しています。

 シオマネキは絶滅危惧種です。新堀川で発見されてことにより、県の計画では、どのようにすることになっているのでしょうか?
以前ここ(新堀川)にいたシオマネキを移植したことがありました。

 それはどちらのほうへ移植したのでしょうか?
 浦戸湾の湾の入り口の近くに比較的良い場所がありまして、移植しました。確かにシオマネキが住める環境であったかもしれませんが、既にそこには先住者がいるわけです。縄張りがありますので、そこへ入れなかったと思われます。
 深浦地区に泥地がありまして、そこへ新堀川のシオマネキを移植しましたが、そこには既に他のカニもいますし、おそらく生息できなかったと思います。無理やり移植しても駄目だと言うことですね。
 当時9匹移植したようです。全部失敗したようです。
 シオマネキはカニの一種で、仁淀川とか須崎とか、環境の良いところにしかいないと思いましたけれども・・・。
 綺麗かどうかわかりませんが、四万十川と須崎湾、それと浦戸湾で確認されています。
 一般的に環境の良い場所に生息している絶滅危惧種のシオマネキ。新堀川を予定どうり埋め立て、暗渠にした場合、生息できるのでしょうか?
 新堀川を埋め立てると、江ノ口川の水位が何メートルか上昇します。
それで川にふたをしたり、暗渠にしたりすることになります。工事による希少生物や絶滅危惧種への影響はどうなるのでしょうか?
 ひじょうに大きいと思います。ひとつはシオマネキと言いますのは、泥の上に溜まったいろんな生き物を食べています。この生き物は日光によって支えられています。
 ですから暗渠にしますと完全にいなくなると思いますね。川を半分ふさぐとなりますと日光が当たりません。シオマネキは当然住めなくなります。そういう風に思います。
 新堀川は見た目には汚い川です。絶滅危惧種のアカメとか、カワヨウジとか、トビハゼ、などひじょうに貴重な生き物が生息しています。
 近くの住民である西岡謙一さんによりますと、チヌなんかもいるらしく、釣り上げたように伺いましたが・・・・・・。
 チヌも入って来ますし、ハゼの仲間もたくさん入って来ますね。
キチヌも西岡謙一さんの自宅裏で釣れました。
新堀川で釣れたスズキ

 かなりたくさん魚も新堀川にはたくさんいるということですね。
 そうです。高知市のどまんなかにアカメがいることなどは、奇跡的なことではないでしょうか。綺麗、汚いはあくまで人間の判断であって、生き物にとりましては、栄養物があるから生息しているわけです。
 この事実をもっと大切にしていただきたいと思います。
 人間が考える生態系や、自然環境の良い悪いと、生き物の生存できる適応する環境とは違うこともたくさんあるということなのでしょうか?
 新堀川の生態系は生き物に取りましては良い環境と言えるのでしょうか?
 
 現実にいろんな生き物が住んでいると言うことは、彼らにとっては良い環境だと思います。栄養物がひじょうに多いと言うことですね。水も干満がありますので、見た目よりも水質は良いのではないでしょうか。
 私たちは汚れていると言いますが、実はそうではなくて、生き物とってはひじょうに良い環境なのです。
 堀川の水門あたりからの潮の干満などで、「混ぜ繰られて」栄養物が溜まって生き物には良い環境になっているのでしょうか?

 そうだと思いますね。
 先般の台風の時、堀川水門が閉じられました。潮の干満の影響が遮断されたら影響はあるのでしょうか?
普段は開いている堀川水門。観察会時には台風対策で閉められていました。
 長期的であればあります。3〜4日や1週間程度であれば生きていけると思います。
 横堀公園の樹木や石垣なども風情があり、景観整備し、新堀川周辺 に遊歩道をつければ、都市中心部で自然を満喫できる貴重な都市公園 になると思いますが・・・。
 私もそのように思います。あれだけの貴重な生き物がいます。歩道を整備し、ベンチを置くなどして。
 生き物を見ますと、人間心が和むんです。そういう空間が高知市の「どまんなか」にあります。これは「凄いこと」だと私は思います。
写真左方向に300メートルほど歩きますと、高知市の中心街はりまや橋に行けます。新堀川は少しだけ環境を整備すれば素晴らしい都市公園になるでしょう。
 都市計画道路の説明書などを読みますと、「近自然工法」自然を保護しながら、道路建設をするように説明されているようなのですが・・・。
 自然生態系に負荷を極力かけないんだという考え方のように思われるのですけれども・・。
 これは既に政府の方針で「自然再生」と言うことが謳われています。「近自然」ではなくて、「自然再生」だと言うことです。「もとの自然に戻せ」と言うのが方針です。
 昔の浦戸湾は高知パルプの廃液や、家庭排水によって汚染されていました。昭和46年に高知パルプがなくなり、下水道整備によって環境整備されてきました。「浦戸湾7河川一斉清掃」のように市民各位の浄化意識も高まってきました。
 かなり浦戸輪湾近辺の自然が回復してきたと思ってよろしいのでしょうか?

 私もそう思います。

 そういたしますと、「ビオトープ」だとか言わなくても、良い見本が新堀川にあるということですね。
 
 自然のビートープです。ビオトープと言いますと、人工的なものをみなさん連想しています。そうではありません。もともと自然にあるいろんな生き物がある群集を「ビオトープ」と言うのです。
 その見本が新堀川なのです。
 はりまや橋に近くて、かるぽーとに近いところで、高知市中心街に生き物がたくさん生息する河川があるということは貴重ですね。他にも昆虫や野鳥などもたくさん生息しているのではないでしょうか。
 もうすこし新堀川の上流域まで見ていきますと、かなりの距離がありますので、いろんな生き物がいると思います。
 行政側の関心度はどうなのでしょうか?あまり情報が入りませんので。
 どうなのでしょうか?街の真ん中でもありますし。土地買収なので大変なのではないでしょうか?
道路計画の一部。市内中心部だけに土地買収は高額の費用がかかる。国の補助が半分と言ってもすべて税金です。
 高知県も高知市も予算が逼迫しています。果たして総事業費100億円の都市計画道路の費用対効果を考えてみる必要性はあると思いますね。
 私もそのように思いますね。
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