朝鮮問題を敢えて考える
 今週のゲストは、医療法人共生会理事、下司病院事務管理部長下司孝之さんです。
今日のテーマは「朝鮮問題を敢えて考える」です。
 朝鮮半島を巡る問題と言えば、北朝鮮による日本人拉致問題や、核問題が挙げら
れます。また韓国とは竹島問題でギクシャクしています。しかしキムチやテレビドラマ「冬のソナタ」などで大衆文化も融合してきています。今日のテーマは「朝鮮問題を敢えて考える」ということで、お話を伺います。
高知市に「唐人町」(とうじんまち)という町名があります。朝鮮との繋がりがあるようなのですが?
 私の住んでいる町が唐人町土手下の与力町です。昔は南与力町ともいっていました。唐人町の横が与力というのはやはり取締も念頭にあったかも知れませんね。
 でも、この唐人町は韓人町(からひとまち)、韓国の方の韓人の町で唐は当て字です。
 高知市民は朝鮮人が住んでいたとは余り知りませんね。400年前、拉致してきた
朝鮮人の町がすぐ横にあったのに。みんなは無関心ですね。今「日本人拉致問題」であれだけ関心があるのにです。
 その子孫はすっかり日本人に同化をして戦前の昭和迄いたことは分かっていますが、今はもういないのかも知れませんね。連れて来られたのは豊臣秀吉が朝鮮に攻め込んだときで長曽我部の軍勢が持ち帰った耳が六千、捕虜も二百人以上いたそうです。始めは長浜の今、精華園のところに住まわされ、それから数十人が唐人町に移り住まわ
されています。
 徳川の時代になって両国間で交渉がもたれ、帰国出来た幸運な人もいますが、帰れない人がここへ住みついたわけです。

現在でも高知市の地名で「唐人町」は残っています。

しかも旧の「東唐人町町内会」名で残っている町内会の看板。

地名は歴史を感じさせるもので、大事なものであると思います。唐人町は残りましたが、出身地を表す「京町」「種崎町」「堺町」「掛川町」「山田町」などが消えて行きました。

向こう3軒両隣から西洋式のブロック化が高度経済成長期に進み日本の町屋文化が失われていきました。京町鳩屋のご主人等が旧町名の復活を高知市に働きかけていましたね。

職業や身分に関する「鉄砲町」「農人町」「与力町」「鷹匠町」お城下の「堀詰め」「桝形」「新堀」「大膳町」「越前町」「築屋敷」「新屋敷」などには消えていった町もありますが、残された町との付き合いを伝承していかなければならないと思います。

高知の食材や料理は特色がありますね。固い豆腐や、鰹を食べるおりににんにくを使用するのも朝鮮半島文化の影響なのでしょうか?
この唐人町の朝鮮人の暮らしを支えたのが、彼等がもたらした豆腐です。土佐式のとても固い豆腐で、美味しいと食べられた方がいうところです。安芸の樫の実が入っている「かしきり豆腐」も独特の味ですし、大豊や大野見村など、田舎に固豆腐は今も伝えられています。
 にんにくも朝鮮からもたらしたのでしょうね、料理では高知の第一人者の方がそうだと申されていました。朝鮮に行ったとき感じたのは土佐の方がもっと、ニンニクを食べているのではないかと思ったことでした。なにしろ50年も昔は酒の魚にニンニクを根付きのままあぶってまるかじりしていましたからね。
(番組出演者交流会の新堀川七輪サロンでもにんにくをそのまま焼いて食べました。)
番組出演者・関係者交流会では「にんにく」を七輪で焼いてかじって食べました。
韓国との交流は「木浦の母」の田内千鶴子氏の影響もあり高知と韓国はあります。しかし北朝鮮との交流は盛んではありません。そのあたりはどう考えられますか?
 北朝鮮への入国は県内旅行者の名簿が簡単にできる程でしかありません。でも中国に観光旅行にいったついでにとか、なにしろ対岸ですからビザさえもらえれば入れないわけはないのです。一般観光でも行くことは出来ます。
 旅行者が少ないのは旅費が高いのも一つの原因ですよね。2000年夏にロシア経由で入ったときも16万程かかりましたし、20年前は30万は軽くいりました。名古屋からの直行便が復活すればもう少し安くなると思います。
 政府間交渉を待っての民間交流を考えるのではなく民間から「ウチの大将はひどいけれどお前のところはどうなんだ」と話し合える交流が必要だと思います。
 ある朝鮮人が、「日本は進んだ国ですね」というので、「地震が多いですよ」というと「そんな怖い国には行きたくない」と言っています。中国で地震があり、平壌で震度1の時にパニックになったといいますからそうなんでしょう。庶民は話し合えば分りあえると思います。
最近日本の閣僚や、要人の「日韓併合」を正当化する談話が相次いでいます。わざわざ刺激するような発言が目立ちます。それについてどう思われますか?

  
 北というより韓国の人々が怒っていますよね。韓国の民族派も右翼もそれには相容れないし、左翼や韓国政府は統一指向を持っているので、日本と組んで北をやっつけるという考えはないわけです。日本はアメリカさんでない独自のアジア外交をしなければなりません。閣僚の不用意な発言は韓国以外アジアの人々も理解できるのでしょうか。在日大韓民国民団から綺麗なパンフレットが出ています。タイムリーですから評判です。読んでみてください。

どう考えましても「日韓併合」は日本の侵略ですね。それは歴史的な事実ですからね

 韓国の民主化は日本よりもすすんでいるのではないかとさえ私は思います。私も近く一度行ってきたいと思っています。

高知市若松町にある田内千鶴子の誕生地。

韓国に渡り朝鮮戦争の孤児を多数引き取り育て、「木浦の母」と呼ばれていました。

 
 力道山は北朝鮮の英雄だと言われています。現地でもそうなのでしょうか?
力道山の切手も発行されているのでしょうか?

 はい、平壌でプロレス興行をした猪木の切手が発行されていますがこのとき力道山の切手も発行されています。日本でも戦後の代表的な人物として力道山の切手は発行されています。

 朝鮮人としてではなくアメリカ人を空手チョップでやっつける日本人としてですが、でも日朝で同一人物を顕彰した唯一の発行例です。力道山は北朝鮮で人民英雄、祖国に多額の献金もしています。娘さんがあちらに住んで居ます。

 2002年の「平壌宣言」から、日朝の関係改善は進展していません。関係改善するには方策はありますか?日本の国論は経済制裁へ行くようになっているようですが・・
 お互いが嫌嫌をやっている場合じゃない、アメリカやロシアに介入ささないように日朝が主体的に動き切ることだ。米軍を日本海から閉め出し、反核・非武装の海として沿海4カ国による 日本海経済圏をつくることが得策だ。アメリカに日本が物言いをしなければ朝鮮は日本の頭越しに解決能力を持つアメリカとの直接交渉を試み続けるだろう。
 経済制裁は実効性があるときに効果があるが、朝鮮戦争から50年実質的な経済制裁はされているので、効果はないし、朝鮮も困るは困っても中露への傾斜を深めるばかりで日本が対米対中政策においてなんのカードも持てないことを示しているだけです。
 対米対中の狭間では日本と朝鮮・韓国が協調する利益を考えなくてはいけないと思う。
 現在「6カ国協議」は進展しているのでしょうか?その協議で朝鮮半島問題はすべて解決するのでしょうか?
 朝鮮は、アメリカとの協議において進展するだろう。対米追随の日本の出番はないでしょう。中近東がパレスチナとイラクで火を吹いているとき、この地域の不安定化は極東に飛び火するという世界地図の見方を覚えるべきだ。
 日本にとっての朝鮮問題はアジアの諸国民が日本という国を見守っていることを忘れてはならない、拉致等日本の主張はポイントになると思ったら大間違いだ。それなら日本軍から受けたあれこれはどうしてくれるという世論に火がつくだけだ。
 下司さんの考える朝鮮問題の解決策はありますか?お構いない範囲でご披露下さい。

 日本が非同盟中立の輪に入ること、アメリカの軛から抜け出し日本はアジアとの協調軸を作らなくてはいけないと思います。
 日本と朝鮮半島との連携は、中国独自の発展とともに歩める大きなアジアの前輪になると思います。後輪にインドと中近東が位置しましょうか。日本が市場を形成する上でも朝鮮との連携は大切で安定が必要です、相互の発展の上に両国の民主化も進むと思います。


 極東では日本海経済圏がロシアも巻き込んで巨大な人口で成立すると思います。アメリカとの関係を総て清算し、捨てろと言っているわけではありません。アメリカ映画なら毎週見ています。
 軍事同盟を解消し、環太平洋諸国の非核化を提唱してはいかがだうか。アメリカは特異な国、日本が軍事的に普通の国になっても、普通の扱いにはなりません。

 もともと日本と朝鮮は昔の百済の時代から交流がありましたね。それが近年少しねじれているようですね。

 ルーツは百済系だと言われている土佐のお神楽の存在、波の多いという朝鮮語のパタが訛ったといわれる幡多郡など、高知県でも朝鮮半島との交流が伺われます。考古学の岡本健二先生に土佐との関係をお聞きしましたら一言「だらけよ」ということでした。


 大陸との関係では朝鮮は日本の兄貴分、それが明治期の日本の政策ですっかりゆがめられてきました。今日でも北朝鮮に対する批判はあるとしても、それが嘲りを含んだものであったり、一国の指導者に対する無礼なマスコミの有り様には、お隣の韓国民が眉を潜めているのです。アメリカに対して同じような記事を雑誌はのせることができるのでしょうか。到底このような歴史観ではアジアの信頼を得ることが出来ないと思います。お互いに「東洋礼節の国」として日朝の発展は望めるし、南北の統一への橋渡しへ日本が役割を果たせるものと思います。
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