品川正治さん講演会 その3
 

■憲法9条第2項の普遍性について
 そういう意味で九条二項は旗はボロボロになったわけですけれども、これを手放せば地球上からその考え方はなくなるというこの重みををはっきりと自覚しながら九条二項の問題に臨んでいるわけなんです。
 ただ、それじゃあ九条二項というのはあくまでも日本独特のもので他の国には普遍性がないのか、ということになりますと、私はそれは違うと思います。確かに19世紀型、20世紀型の世界国家の場合には、むしろ日本は特殊だということが言えるとは思いますが、われわれの現在与えられている課題、あるいはなぜ戦争が起こるのかという課題、そういうものを考えますときには、九条二項は21世紀には普遍的な価値を持つのだと、私自身信じております。
 憲法第9条2項を明記したトレーナー。 右側は英文にて表記されています。
 決して理想主義ではございません。紛争というのは、あるいは争いというのは消えることはないと思います。争いがこの世の中からなくなるだろうという考え方は理想主義とも呼ばれ、宗教に依拠した考え方と言われるかもしれません。私はその説はとっておりません。紛争はある。争いは必ずある。しかしそれを戦争にするかしないかというのは人間が選ぶことなんだと。それを戦争にしないというのが日本の思想なんだと。
 日本のような国、島国でさえ領土領海の問題は千島を始め竹島もあり尖閣列島もあるわけです。領土領海で争いのない国というのは世界にひとつもないといっていいわけです。国際法を勉強しておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、一国も無いといっても決して言い過ぎではないんです。早い話がイギリスはサッチャーのあの時代にアルゼンチンとフォークランド島をめぐって戦争しております。領土領海に関して言うならばドイツの場合は、ドイツ発祥の地のプロイセンという土地は今やポーランド領です。そういう意味で言ったら、領土領海の問題で一切すべて円満に片付いているという国はないわけです。
 今私は国際開発センターというところの会長をしております。私の研究員なり職員の主な活動の場はアフリカなんです。アフリカの国境線を頭に描かれた皆さんは、お解りなるかと思いますが、直線で引かれている国境が多いわけですね。ところが民族、部族が直線で分かれるような住み方をしているわけがないんです。あの民族とだけは一緒になりたくないと思っている者同士が1つの国になったり、同じ民族が2つの国に裂かれたり、そういうことはアフリカでは常識なんです。
 みんなその意味では宗教の違いを民族の違い部族の違い過去の因縁自分の両親を殺された、あの部族に殺されたという話は無数にございます。またヨーロッパの植民帝国イギリスとかフランスとかポルトガルとかベルギーだとかという国は、部族の対立を利用しながら統治しとったわけなんです。だから紛争のタネというのが人為的も作られているんです。
 

イラク戦争では多数のイラク市民が犠牲になりました。最近では米国の海兵隊がイラク市民を虐殺したとの報道もあります。

 日本は戦後60年間日本国憲法のお陰で海外で軍隊が他国民を殺害したことはありません。正義の戦争(?)も否定している憲法を日本は持っているからです。

 しかし最近は与党も野党も「軍隊で他国民を殺害することのできる普通の国」になろうとして憲法改正の動きを熱心にされているようです。

 紛争が絶えないにもかかわらず戦争にならない国、地方もございます。紛争がすぐに戦争になっていく国もあります。その理由のひとつはきわめて簡単なんです。何か取れるところで紛争が起これば戦争になっています。ダイヤモンドが取れる、石油が取れる、ウランのような物質が取れる、そういう地域での紛争は戦争になっています。武器商人が猛烈な売り込みをやっているわけです。戦争にしようとする力が非常に強く働いているわけです。その武器商人の背後には国際的な大資本の影が必ずございます。
 今私は私の社員に対して目線は絶対上にあげるな。という指示をしております。一番困っている人から順番に助けていけ。政府が正しい、こっちの部族が正しくないというものの見方は、これは西洋近代のものの見方であって、両親が殺された部族に対して恨みを持たないというはずがないわけなんです。残念ながら日本は安全保障常任理事国に立候補するために政府を助けるという姿勢が強かったのです。票が欲しいということから政府を助けるというODAの姿勢が強かったのです。
 それに対して私は反対だった。一番困った人から助けていく。私のところはそうしていく。こういうことをかねがね社員には言っております。それともうひとつ、日本のそういう開発国に派遣している社員は空港に着いた途端から武器商人につき纏われます。日本人だけ武器を持っていない。だから必ずといってもいいくらい「この拳銃は優秀」だとか「この機関銃は優秀」だとかという格好で、武器商人につき纏われます。
 私の会社では一切それは持っちゃいけない。責任は私がとると。そういう形で一切武器は持たしておりません。それと同時に憲法の話を必ずしろと言っているわけです。本気にしません。びっくりした感じになるわけです。そんな国が世界にあるのかと言うような感じになるわけです。
 これはひとつの、日本の私のような開発のような仕事をやっている者にとっては、この九条二項は最高の武器なんです。これ以上の武器はございません。その日本人を殺すのか。それだけはできないなという感じになるわけなんです。話は若干わき道にそれましたが、そういう形で日本の九条二項の現在の状況では世界中でたった1つしかない。しかしこれは必ず普遍性を持ってくるだろうと私はそう確信しているわけなんです。